■第6話 初心者おやじコーチの発想
ナオトの出場した初めての試合を見て、ナオトに作戦もどきの話をした瞬間から俺はおやじコーチになってしまった。そして動き始めてしまった。
ナオトは体は小さく、足も速くなかった。それは不利なことはよくわかる。しかし、よくよく見回してみると、何より小学校の1年生からやっている連中に比べて「コネ」が足らないと感じた。
誤解しないでほしい。「コネ」という言葉を悪く使うつもりはない。コネ、つまりコネクション・「関係・つながり」だ。
小学校1年生からサッカーをやっている子供たちの数はやはり少ない。
とすると、監督・コーチの覚えも早い。そしてその子たちだけで11人に満たないちっちゃなチームをつくって、そこにコーチが入って練習をしたり、お兄ちゃんチームと試合をしたりする。
当然、そこには監督・コーチとの濃密なコネクションが生まれる。
さらに親たちも少ない1年生の仲間意識があり、かなりまとまりができているわけだ。そしてもちろん監督・コーチとのコネクションも時間とともに醸成されていく。
そこに、ひょっこり4年や5年ぐらいから入ったものは、うがった見方をすれば、一種のよそ者的存在になってしまう可能性がある。
俺は、それなりに気を使った。下手なふるまいは、息子にとってマイナスになってしまう、さらに俺は土地の人間ではない。こんな田舎では、これが一番響く…。
とにかく試合には会場に毎回一番乗りで行った。そしてキャプテンの親の車が来るや、「おやようございます」とあいさつし、彼らの車からチームの装備をグラウンドに運んだ。そしてシートを敷き、テントを張る。後から来た親たちに、一人ずつあいさつをする。とにかく、一生懸命率先して雑用をやった。周りの親や監督・コーチに俺の顔と名前、そしてナオトを結びつけるためだった。
今、考えると…なんとも、バカバカしいことを考えたものだ。もちろん、率先していろいろ雑用をやることは悪いことじゃない。しかし、レギュラーの座を「親の雑用の一生懸命さ」で決める監督がどこにいる?
しかし、親とはそういうものなのだ。一言で言えば、「親は子供のことになると見えなくなる時がある」のである。
それを誰が非難できよう…と自己弁護しきり。
さて、ナオト自身も試合に出してもらえた日は、とてもいい顔をしていた。やはり奴もレギュラーになりたかったようだ。そのためか決して練習を休むことはなかった。
毎週3回の練習日、そして土日は試合の毎日、逆に言うとサッカーのない日は週に2日しかないのだ。そのサッカーのない2日は、俺の塾に来て勉強だ。もちろん宿題だって出る。
考えてみれば、今の小学生はとても忙しい。俺たちのガキのころのように、家に帰れば鞄を放りだして遊びに行ったような時代が懐かしい気がした。
そんな本人の努力の成果か、親子の努力のせいか、試合に出してもらえる頻度が3試合か4試合に1度だったものが、少しずつ増えてきた。5分でも10分でも試合に出してもらえた日は、帰宅してから、いつもナオトと必ずミーティングらしきものをやった。
きっと息子にしてみれば、試合でくたくたに疲れているのに、ウザイ親父にいろいろ言われていい迷惑だったに違いない。
チームには、断トツにうまい5年生で、既に6年生のAチームのメンバーに選ばれている選手3名、もうこれは別格だ。そして次にしっかりBチームのレギュラーになっている準別格、3名、これも決まりだ。ねらえる座は5、しかしナオトの適性から見て、ボランチ、あるいはバックラインだろうと思った。だが、バックにはレギュラーが既に…
「さて、どうする」
初心者おやじコーチの苦悩が始まる
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ナオトの出場した初めての試合を見て、ナオトに作戦もどきの話をした瞬間から俺はおやじコーチになってしまった。そして動き始めてしまった。
ナオトは体は小さく、足も速くなかった。それは不利なことはよくわかる。しかし、よくよく見回してみると、何より小学校の1年生からやっている連中に比べて「コネ」が足らないと感じた。
誤解しないでほしい。「コネ」という言葉を悪く使うつもりはない。コネ、つまりコネクション・「関係・つながり」だ。
小学校1年生からサッカーをやっている子供たちの数はやはり少ない。
とすると、監督・コーチの覚えも早い。そしてその子たちだけで11人に満たないちっちゃなチームをつくって、そこにコーチが入って練習をしたり、お兄ちゃんチームと試合をしたりする。
当然、そこには監督・コーチとの濃密なコネクションが生まれる。
さらに親たちも少ない1年生の仲間意識があり、かなりまとまりができているわけだ。そしてもちろん監督・コーチとのコネクションも時間とともに醸成されていく。
そこに、ひょっこり4年や5年ぐらいから入ったものは、うがった見方をすれば、一種のよそ者的存在になってしまう可能性がある。
俺は、それなりに気を使った。下手なふるまいは、息子にとってマイナスになってしまう、さらに俺は土地の人間ではない。こんな田舎では、これが一番響く…。
とにかく試合には会場に毎回一番乗りで行った。そしてキャプテンの親の車が来るや、「おやようございます」とあいさつし、彼らの車からチームの装備をグラウンドに運んだ。そしてシートを敷き、テントを張る。後から来た親たちに、一人ずつあいさつをする。とにかく、一生懸命率先して雑用をやった。周りの親や監督・コーチに俺の顔と名前、そしてナオトを結びつけるためだった。
今、考えると…なんとも、バカバカしいことを考えたものだ。もちろん、率先していろいろ雑用をやることは悪いことじゃない。しかし、レギュラーの座を「親の雑用の一生懸命さ」で決める監督がどこにいる?
しかし、親とはそういうものなのだ。一言で言えば、「親は子供のことになると見えなくなる時がある」のである。
それを誰が非難できよう…と自己弁護しきり。
さて、ナオト自身も試合に出してもらえた日は、とてもいい顔をしていた。やはり奴もレギュラーになりたかったようだ。そのためか決して練習を休むことはなかった。
毎週3回の練習日、そして土日は試合の毎日、逆に言うとサッカーのない日は週に2日しかないのだ。そのサッカーのない2日は、俺の塾に来て勉強だ。もちろん宿題だって出る。
考えてみれば、今の小学生はとても忙しい。俺たちのガキのころのように、家に帰れば鞄を放りだして遊びに行ったような時代が懐かしい気がした。
そんな本人の努力の成果か、親子の努力のせいか、試合に出してもらえる頻度が3試合か4試合に1度だったものが、少しずつ増えてきた。5分でも10分でも試合に出してもらえた日は、帰宅してから、いつもナオトと必ずミーティングらしきものをやった。
きっと息子にしてみれば、試合でくたくたに疲れているのに、ウザイ親父にいろいろ言われていい迷惑だったに違いない。
チームには、断トツにうまい5年生で、既に6年生のAチームのメンバーに選ばれている選手3名、もうこれは別格だ。そして次にしっかりBチームのレギュラーになっている準別格、3名、これも決まりだ。ねらえる座は5、しかしナオトの適性から見て、ボランチ、あるいはバックラインだろうと思った。だが、バックにはレギュラーが既に…
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