■8時18分 第9話「ファーストトーク」
卓は、今日のためにタウンガイドを買い込み、ネットで穴場なるものを探し回った。そしてつくったプラン…
まず、映画を見る。そして次は、何のことはない…ただの喫茶店だった。
卓「この近くにかわいい喫茶店があるらしいんですよ。行ってみませんか?」
佐代子「はい」
二人は、並んで歩き出した。いつも、後ろからだったり、追い越してだったり、一緒に並んで歩けるなんて、卓はそんなことにいたく感動していた。横を向けば、彼女がいる。そしてとても穏やかな表情でこちらを向き返してくれる。サイコー!
卓「ここだ、ここだ」
しかし、ネットや雑誌に紹介されているような有名な喫茶店、さらに日曜日とあっては、とても込んでいて、入れる状態ではなかった。
卓「いや〜こんでるね」
佐代子「すごい人気、何か有名なものでもあるのかしら?」
卓「ここのちっちゃい、あの、何だっけ、ケーキみたいなのが人気らしいです」
佐代子「ティラミス?」
卓「そうそう、それそれ」
佐代子「へえ、残念だわ、私も食べてみたかったな〜」
卓「じゃあ、待つ?」
佐代子「でも、1時間ぐらいかかりそうですね」
卓「じゃあ、別の所にしましょう」
佐代子「はい、ここはまた今度…あっ、ごめんなさい、また今度だなんて」
卓「そう、また今度にしましようよね、絶対、今度ですよ」
卓は、彼女の「また今度」という言葉に感激した。やたら感激した。
さて、困った。プランは暗礁に乗り上げた。
まあ…なんとかなるか。卓は、周りを見回した。ふと見ると、向かい側に古そうな喫茶店があった。
卓「あっちに行きませんか」
佐代子「あ、はい」
二人は、道路を渡って、反対側にある古びた喫茶店に入った。
ドアを開けた。「カランコロン」と喫茶店ではよくある音がベルが鳴り、ふわっと香ばしいコーヒーの香りに包まれた。ここは、サイフォンで一杯ずつコーヒーをたてる店らしい。いい雰囲気の店だ。
卓「なかなかいいね」
佐代子「歴史がありそう」
卓はモカを、佐代子はキリマンジェロを頼んだ。
卓は、さっきの映画の間じゅう、結局、彼女に何も話せなかった。
「映画だもんな…ベラベラしゃべるわけにいかないし、女の子との話ってのは、何言えばいいんだ?」
店員が持ってきたコーヒーを一口飲んだ。モカの酸味がさわやかに口の中に広がった。
「うまい…」独り言のように言った。
「おいし〜」佐代子がうれしそうに卓の顔を見た。
「あ、おいしいね、ここのコーヒー、よかったね、ここで」卓は会話のきっかけができて少しほっとした。
「田嶋さん…」佐代子が名前で呼んでくれた。
「うん、なに?」
「ああいう映画ってあまり好きじゃないみたいですね」
「いや、そんなことはないよ、おもしろかったよ」
「だって、おもしろいなっと思って田嶋さんの方を見ても、うわの空みたいにしていらしたから」
…違うよ、こっちは映画どころじゃなかったんだって、デートの次のこと考えなきゃならないし…
「い、いや…緊張しちゃって…」
「まあ!緊張ですって…よくおっしゃいますね」
「え〜どうして?」僕だって緊張しますよ。
「あら、私の会社の受け付けで、あんな大声で朗読なさったのに」佐代子はいたずらっぽく笑った。
「朗読?」卓は首をかしげた。
「もう、お忘れになったんですか?よかったら映画に行きませんかって」彼女は、またいたずらっぽく笑った。
「ろ、朗読だった?」卓は自分の顔が真っ赤になっていくのがわかった。
「はい、とっても、かわいい朗読でしたよ」佐代子はクスクス笑って言った。
「いや、参ったな〜ハハハ」
ふと会話が途切れた
卓「…実はさ」
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卓は、今日のためにタウンガイドを買い込み、ネットで穴場なるものを探し回った。そしてつくったプラン…
まず、映画を見る。そして次は、何のことはない…ただの喫茶店だった。
卓「この近くにかわいい喫茶店があるらしいんですよ。行ってみませんか?」
佐代子「はい」
二人は、並んで歩き出した。いつも、後ろからだったり、追い越してだったり、一緒に並んで歩けるなんて、卓はそんなことにいたく感動していた。横を向けば、彼女がいる。そしてとても穏やかな表情でこちらを向き返してくれる。サイコー!
卓「ここだ、ここだ」
しかし、ネットや雑誌に紹介されているような有名な喫茶店、さらに日曜日とあっては、とても込んでいて、入れる状態ではなかった。
卓「いや〜こんでるね」
佐代子「すごい人気、何か有名なものでもあるのかしら?」
卓「ここのちっちゃい、あの、何だっけ、ケーキみたいなのが人気らしいです」
佐代子「ティラミス?」
卓「そうそう、それそれ」
佐代子「へえ、残念だわ、私も食べてみたかったな〜」
卓「じゃあ、待つ?」
佐代子「でも、1時間ぐらいかかりそうですね」
卓「じゃあ、別の所にしましょう」
佐代子「はい、ここはまた今度…あっ、ごめんなさい、また今度だなんて」
卓「そう、また今度にしましようよね、絶対、今度ですよ」
卓は、彼女の「また今度」という言葉に感激した。やたら感激した。
さて、困った。プランは暗礁に乗り上げた。
まあ…なんとかなるか。卓は、周りを見回した。ふと見ると、向かい側に古そうな喫茶店があった。
卓「あっちに行きませんか」
佐代子「あ、はい」
二人は、道路を渡って、反対側にある古びた喫茶店に入った。
ドアを開けた。「カランコロン」と喫茶店ではよくある音がベルが鳴り、ふわっと香ばしいコーヒーの香りに包まれた。ここは、サイフォンで一杯ずつコーヒーをたてる店らしい。いい雰囲気の店だ。
卓「なかなかいいね」
佐代子「歴史がありそう」
卓はモカを、佐代子はキリマンジェロを頼んだ。
卓は、さっきの映画の間じゅう、結局、彼女に何も話せなかった。
「映画だもんな…ベラベラしゃべるわけにいかないし、女の子との話ってのは、何言えばいいんだ?」
店員が持ってきたコーヒーを一口飲んだ。モカの酸味がさわやかに口の中に広がった。
「うまい…」独り言のように言った。
「おいし〜」佐代子がうれしそうに卓の顔を見た。
「あ、おいしいね、ここのコーヒー、よかったね、ここで」卓は会話のきっかけができて少しほっとした。
「田嶋さん…」佐代子が名前で呼んでくれた。
「うん、なに?」
「ああいう映画ってあまり好きじゃないみたいですね」
「いや、そんなことはないよ、おもしろかったよ」
「だって、おもしろいなっと思って田嶋さんの方を見ても、うわの空みたいにしていらしたから」
…違うよ、こっちは映画どころじゃなかったんだって、デートの次のこと考えなきゃならないし…
「い、いや…緊張しちゃって…」
「まあ!緊張ですって…よくおっしゃいますね」
「え〜どうして?」僕だって緊張しますよ。
「あら、私の会社の受け付けで、あんな大声で朗読なさったのに」佐代子はいたずらっぽく笑った。
「朗読?」卓は首をかしげた。
「もう、お忘れになったんですか?よかったら映画に行きませんかって」彼女は、またいたずらっぽく笑った。
「ろ、朗読だった?」卓は自分の顔が真っ赤になっていくのがわかった。
「はい、とっても、かわいい朗読でしたよ」佐代子はクスクス笑って言った。
「いや、参ったな〜ハハハ」
ふと会話が途切れた
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