■去りゆく者
次男が6年生の連休明け、大きな試合がどんどん始まり、チーム活動は最盛期を迎えた。毎週、毎週、土日・祝祭日は、試合会場に行く日々が続いた。「土日が一番きついよな〜」なんてぐったりしているおやじもいた。
それもそうだ。仕事で毎日きつい思いをして、一番働かされる年代の連中ばかりだ。少年サッカーのおやじたちは、ちょうど日本を背負っている世代なのだ。好きなゴルフにもいつしか行けなくなり、釣りにもいけず、ほぼどこかへ出かけるような趣味はすべて消え去ってしまった。
サッカーのサポートで真っ黒に日焼けして、上司から「君、またゴルフかね」と、要らぬ疑惑を持たれる気の毒なおやじまで出てきた。
かといって、それが不満かというと、そうでもないので、おやじコーチというのはおもしろい。まあ、息子が6年生までチームに残って、おやじも一緒にやっているような連中は、このくらいのことでは全くへこまない。
さて、子供たちに少しずつ異変が起きてきた。どんどん身長が伸び、大きくなっていく子供、周りの成長に置いていかれ、いつしか体格的に相手に勝てなくなってきた子、子供の中での序列が変わりつつあった。
「鉄壁の守り」と、自分たちだけで自慢していたディフェンス陣の1人に異変が起きた。相手が大きくて、いや自分が小さくてとめられない…。飛ばされてしまう。
仲良しだったほかの子どもたちから、「何やってんだよ」と言われることも多くなってきた。
「あいつ、ザルだぜ」そんなチームの雰囲気に、その子の表情が少しずつ曇っていった。その子は少しずつ練習にも出られなくなっていった。
俺としても黙って見ていたわけではない。その子がいかに「ザル」と言われようが、他のメンバーより上手だからレギュラーの座にいるわけだ。それがいなくなるというのはやはりチームにとってマイナスになるには違いない。
その子のためとか、仲間なんだからなどという道義的な気持ちより、チームの運営としての合理的考えになっていた。
その子のお父さんと話をし、問題は何なのかを話し合った。お母さんとも話した。女房は、一生懸命、お母さんを励まし、その子を励ました。
バカにした子どもたちにも、馬鹿にするようなことは言わないように言い聞かせた。
その子たちは、あの子が練習に出てこれなくなったのは、自分たちのせい?…その話を聞いてびっくりしたような表情だった。
僕たちそんなつもりじゃなかったんだよ…そんな感じだった。
子どもには、他人の心をそこまで察してやれるほどの力はない。その子たちも悪気はなかったのだろう。
だが、一度傷ついた小さな心は、元には戻らなかった。
誤解が解け、みんなで涙を浮かべ、明るくまた元のように戻る…「みんな仲間じゃないか、また頑張ろうよ」なんていうのは、ドラマとマンガの世界だけなのだ。
だが、俺も、そのドラマを夢見て、一生懸命説得はした。しかし、やはりドラマにはならなかった。その子はチームを去っていった。
その子は多分サッカーは好きにはなれないだろうな、そんな寂しい思いが残った。
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次男が6年生の連休明け、大きな試合がどんどん始まり、チーム活動は最盛期を迎えた。毎週、毎週、土日・祝祭日は、試合会場に行く日々が続いた。「土日が一番きついよな〜」なんてぐったりしているおやじもいた。
それもそうだ。仕事で毎日きつい思いをして、一番働かされる年代の連中ばかりだ。少年サッカーのおやじたちは、ちょうど日本を背負っている世代なのだ。好きなゴルフにもいつしか行けなくなり、釣りにもいけず、ほぼどこかへ出かけるような趣味はすべて消え去ってしまった。
サッカーのサポートで真っ黒に日焼けして、上司から「君、またゴルフかね」と、要らぬ疑惑を持たれる気の毒なおやじまで出てきた。
かといって、それが不満かというと、そうでもないので、おやじコーチというのはおもしろい。まあ、息子が6年生までチームに残って、おやじも一緒にやっているような連中は、このくらいのことでは全くへこまない。
さて、子供たちに少しずつ異変が起きてきた。どんどん身長が伸び、大きくなっていく子供、周りの成長に置いていかれ、いつしか体格的に相手に勝てなくなってきた子、子供の中での序列が変わりつつあった。
「鉄壁の守り」と、自分たちだけで自慢していたディフェンス陣の1人に異変が起きた。相手が大きくて、いや自分が小さくてとめられない…。飛ばされてしまう。
仲良しだったほかの子どもたちから、「何やってんだよ」と言われることも多くなってきた。
「あいつ、ザルだぜ」そんなチームの雰囲気に、その子の表情が少しずつ曇っていった。その子は少しずつ練習にも出られなくなっていった。
俺としても黙って見ていたわけではない。その子がいかに「ザル」と言われようが、他のメンバーより上手だからレギュラーの座にいるわけだ。それがいなくなるというのはやはりチームにとってマイナスになるには違いない。
その子のためとか、仲間なんだからなどという道義的な気持ちより、チームの運営としての合理的考えになっていた。
その子のお父さんと話をし、問題は何なのかを話し合った。お母さんとも話した。女房は、一生懸命、お母さんを励まし、その子を励ました。
バカにした子どもたちにも、馬鹿にするようなことは言わないように言い聞かせた。
その子たちは、あの子が練習に出てこれなくなったのは、自分たちのせい?…その話を聞いてびっくりしたような表情だった。
僕たちそんなつもりじゃなかったんだよ…そんな感じだった。
子どもには、他人の心をそこまで察してやれるほどの力はない。その子たちも悪気はなかったのだろう。
だが、一度傷ついた小さな心は、元には戻らなかった。
誤解が解け、みんなで涙を浮かべ、明るくまた元のように戻る…「みんな仲間じゃないか、また頑張ろうよ」なんていうのは、ドラマとマンガの世界だけなのだ。
だが、俺も、そのドラマを夢見て、一生懸命説得はした。しかし、やはりドラマにはならなかった。その子はチームを去っていった。
その子は多分サッカーは好きにはなれないだろうな、そんな寂しい思いが残った。
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