■もう一つの8時18分 第19話「兄妹」
仕方なく、早めに退社することにした。帰りにスーパーに寄り、自然に兄の好きなものを選んでいた。そして鯛の刺身とキリンの缶ビール、そして日本酒の鬼ごろしを買って部屋の鍵を開けようとしたとき
「おい…」
突然の声に飛び上がりそうにびっくりして振りかえると、兄だった。
「びっ、びっくりした、悲鳴上げるところだったわよ、兄ちゃん警察行きだよ、もう…どうしたの?」
「いや、意外に早く会議終わってな、こんな時間になってしまった」
「ご飯まだでしょう?」
「ああ、腹減った」
部屋に入ると、和雄は、勝手に佐代子の部屋の冷蔵庫を開け、缶ビールを出して、歩きながらぐいぐい飲み始めた。
ソファーに座るころには、缶は空になっていた。
「ああ、うめえ〜」
「はい、こっちの方がいいんでしょう?」佐代子は、そう言いながら、買ってきたキリンの1リットル缶とグラスを置いた。
「お〜サンキュ」和雄は、そう言いながら、グラスになみなみとビールを注いでぐいぐい飲みだした。
「ふ〜、やっぱキリンだ」満足そうに和雄は言った。
「ちょっと、これつまんでて、すぐ何かつくるから」佐代子は、鯛の刺身を皿に移し、箸と一緒に出した。
「いいねえ〜」和雄は満足そうに表情だった。
「テレビ見る?ここにリモコンあるから」佐代子は、キッチンから和雄に声をかけた。
「ああ…」和雄は、テレビをつけてニュースを見ていた。しばらくじっと画面を見て、吐き捨てるように言った。
「ふざけやがって…酒がまずくなら」
ニュースでは、耐震強度偽造事件の報道がなされていた。
「兄ちゃん、できたよ」佐代子は、料理をテーブルに並べて、ソファーにいる兄を呼んだ。
「お、そうか…テレビ見たかよ、ふざけてるよな」
佐代子はちらっとテレビの方を見て
「ああ、あれね、サイテーよね」
「ああ、人間のすることじゃねえ」
「ねえ、こっちにする?」佐代子は、鬼ごろしを出した。
「お、いいねぇ、これ飲んだら、そっちにするか」苦虫をかみつぶしたような表情が急に明るくなった。
「お前の飯はほんと、うまいよな、だからいつも、下手な飲み屋に行かないでまっすぐここに来ちまうんだよ」佐代子のつくった料理に舌鼓を打ちながら、和雄は佐代子に言った。
「ねえ、もったいないでしょう、こんないい女」
「料理は最高だが、おっぱいがな〜小さい」
「知らないくせに」
「いや、俺は知っている」
「あれから成長したんだわ」
「どれ…」と、和雄は佐代子の胸元を見た。
「バカ、何やってんのよ、スケベおやじ」
「あれ〜ほんとじゃん、何か入れてると思ってた」
「なに、見ていたわけ?信じられない…ちょっと奥手だったのよ」
「お前、彼氏はできたか?」
「エッ…」兄のふいの攻撃に一瞬佐代子がたじろいだ。
「ウッソー、お前、男できたのか?」そう言って、和雄は冷の鬼ごろしを一気に空けた。
「そうか…そりゃよかった。で、どんなヤツだ」
ちょっとした空白ができた。和雄は、この空白で何かを感じ取った。
下を向いていた。佐代子が口を開いた。
「まだね、片思い…」
「で、どんなヤツだ」和雄は繰り返した。
佐代子は、今までのことを兄に話し出した。
「おう、それで、なに、お前、待ち伏せしたわけか?」
「うん、バカでしょう?」
「いや、やるじゃないか、さすが俺の妹だ。ハハハ」和雄は豪快に笑った。
「笑い事じゃないんだけど…わたしにとっては」
「すまん、すまん、いや、うれしくてな、サヨがそこまでやるんだ、よっほどいい男なんだろうな」和雄は、本当にうれしそうだった。自分で手酌で酒を注ぎ、飲み始めた。
「煮詰まってんのよ、今」佐代子は、兄の酒を取って自分のグラスに注ぎながら言った。
「いや、それでいいんじゃないか、一時の浮かれていた時期が過ぎて、これから本番じゃないのか」
「これからか、そうかもしれないね、どうすれば進むのかな」グラスの酒を一口飲んで佐代子が
時間がたち、酒も回ってきた佐代子は、事の次第を詳細に話し出した。ずっと相づちを打ちながら聞いていた和雄が静かに言った。
「古いかもしれんけど、縁のものは、自然が一番いいように思う、無理することはないと思うな、縁だよ。自然に何かが起こるし、自然に何かをしてしまうんじゃないのかな、焦る必要はないよ」
佐代子は、和雄の言葉に少し驚いた。イケイケの兄ちゃんが、マジに「縁」なんて言うなんて…。真面目に考えてくれた兄に感謝した。
「ありがとう、兄ちゃん」
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仕方なく、早めに退社することにした。帰りにスーパーに寄り、自然に兄の好きなものを選んでいた。そして鯛の刺身とキリンの缶ビール、そして日本酒の鬼ごろしを買って部屋の鍵を開けようとしたとき
「おい…」
突然の声に飛び上がりそうにびっくりして振りかえると、兄だった。
「びっ、びっくりした、悲鳴上げるところだったわよ、兄ちゃん警察行きだよ、もう…どうしたの?」
「いや、意外に早く会議終わってな、こんな時間になってしまった」
「ご飯まだでしょう?」
「ああ、腹減った」
部屋に入ると、和雄は、勝手に佐代子の部屋の冷蔵庫を開け、缶ビールを出して、歩きながらぐいぐい飲み始めた。
ソファーに座るころには、缶は空になっていた。
「ああ、うめえ〜」
「はい、こっちの方がいいんでしょう?」佐代子は、そう言いながら、買ってきたキリンの1リットル缶とグラスを置いた。
「お〜サンキュ」和雄は、そう言いながら、グラスになみなみとビールを注いでぐいぐい飲みだした。
「ふ〜、やっぱキリンだ」満足そうに和雄は言った。
「ちょっと、これつまんでて、すぐ何かつくるから」佐代子は、鯛の刺身を皿に移し、箸と一緒に出した。
「いいねえ〜」和雄は満足そうに表情だった。
「テレビ見る?ここにリモコンあるから」佐代子は、キッチンから和雄に声をかけた。
「ああ…」和雄は、テレビをつけてニュースを見ていた。しばらくじっと画面を見て、吐き捨てるように言った。
「ふざけやがって…酒がまずくなら」
ニュースでは、耐震強度偽造事件の報道がなされていた。
「兄ちゃん、できたよ」佐代子は、料理をテーブルに並べて、ソファーにいる兄を呼んだ。
「お、そうか…テレビ見たかよ、ふざけてるよな」
佐代子はちらっとテレビの方を見て
「ああ、あれね、サイテーよね」
「ああ、人間のすることじゃねえ」
「ねえ、こっちにする?」佐代子は、鬼ごろしを出した。
「お、いいねぇ、これ飲んだら、そっちにするか」苦虫をかみつぶしたような表情が急に明るくなった。
「お前の飯はほんと、うまいよな、だからいつも、下手な飲み屋に行かないでまっすぐここに来ちまうんだよ」佐代子のつくった料理に舌鼓を打ちながら、和雄は佐代子に言った。
「ねえ、もったいないでしょう、こんないい女」
「料理は最高だが、おっぱいがな〜小さい」
「知らないくせに」
「いや、俺は知っている」
「あれから成長したんだわ」
「どれ…」と、和雄は佐代子の胸元を見た。
「バカ、何やってんのよ、スケベおやじ」
「あれ〜ほんとじゃん、何か入れてると思ってた」
「なに、見ていたわけ?信じられない…ちょっと奥手だったのよ」
「お前、彼氏はできたか?」
「エッ…」兄のふいの攻撃に一瞬佐代子がたじろいだ。
「ウッソー、お前、男できたのか?」そう言って、和雄は冷の鬼ごろしを一気に空けた。
「そうか…そりゃよかった。で、どんなヤツだ」
ちょっとした空白ができた。和雄は、この空白で何かを感じ取った。
下を向いていた。佐代子が口を開いた。
「まだね、片思い…」
「で、どんなヤツだ」和雄は繰り返した。
佐代子は、今までのことを兄に話し出した。
「おう、それで、なに、お前、待ち伏せしたわけか?」
「うん、バカでしょう?」
「いや、やるじゃないか、さすが俺の妹だ。ハハハ」和雄は豪快に笑った。
「笑い事じゃないんだけど…わたしにとっては」
「すまん、すまん、いや、うれしくてな、サヨがそこまでやるんだ、よっほどいい男なんだろうな」和雄は、本当にうれしそうだった。自分で手酌で酒を注ぎ、飲み始めた。
「煮詰まってんのよ、今」佐代子は、兄の酒を取って自分のグラスに注ぎながら言った。
「いや、それでいいんじゃないか、一時の浮かれていた時期が過ぎて、これから本番じゃないのか」
「これからか、そうかもしれないね、どうすれば進むのかな」グラスの酒を一口飲んで佐代子が
時間がたち、酒も回ってきた佐代子は、事の次第を詳細に話し出した。ずっと相づちを打ちながら聞いていた和雄が静かに言った。
「古いかもしれんけど、縁のものは、自然が一番いいように思う、無理することはないと思うな、縁だよ。自然に何かが起こるし、自然に何かをしてしまうんじゃないのかな、焦る必要はないよ」
佐代子は、和雄の言葉に少し驚いた。イケイケの兄ちゃんが、マジに「縁」なんて言うなんて…。真面目に考えてくれた兄に感謝した。
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