■バーテンダーかまたり「歯科大生2」
歯科大生の3人組は、楽しそうだった。
「よかった、よかった」俺はほっとした。
彼らに回してあげた女の子は、ユカちゃんと言って、モデルのバイトをやっていた子で、当然スラッとして格好いい子だった。ところが、話し出すと土地柄か、おっとりして、ちょっと天然で、そこがまた人気のあるところだった。
「歯医者さんにならはんのん?すごいねぇ〜」と京都弁で彼らの相手をしていた。
俺が、あちこち目を配りながら、グラスを磨いていると、三人組の一人が、俺に話しかけてきた。背の高い、ヒョロとした感じで、顔もまたヒョロッと長かった。
「あの〜ボトル入れると幾らになりますか?」
今となっては幾らだったか忘れてしまったが、多分、オールド程度のウィスキーで3800円だったような気がする。あのころは消費税もなく、酒税がやたら高くてウィスキーは高価な酒だった。
彼は、俺の言った値段を残りの二人にひそひそと話していた。結論が出たようで、そのヒョロ君が
「ほな、1本キープしてください」と注文をくれた。
「はい、ありがとうございます。オールド一本入りました。」と言うと、彼らの相手をしていたユカちゃんが「ハシモトさん、わたし取ってくるわ」と、俺と反対側の棚の方に行ってくれた。
その間に、俺は、彼らの前にあるビール瓶とグラスを片づけ、カウンターをふいていた。すると、ヒョロ君
「ハシモトさんっていうんですか?」と、俺の方を向いて言った。
「はい、そうです」と答えると。
「学生さんですよね」とまた聞いてきた。
「はい、同志社です」と答えると
「やるねぇ〜」と訳のわからないことを言っていた。
「いえいえ…」と、俺も訳のわからないことを答えた。
カウンターの主役は、あくまで女の子、俺たちカウンターに入っている男は、雑用係兼女の子の監視役みたいなところがある。やたら、客と話すのはあまりよくない。あくまで黒子に徹する。
すると、今度は丸い顔して、メガネをかけている。そうそう今のアキバ系の彼が、
「何学部ですか?」と尋ねてくれた。
「はい、工学部です」と答えると、すかさずヒョロ君が
「やるねぇ〜」とニコニコしている。そしてまた俺が
「いえいえ…」と、同じことを答えていた。
そんなこんなで、とうとう三人は、俺の方を向きだして、いろんな話をしてきた。すると、ユカちゃん、その雰囲気を見て、違うお客さんの相手をし出した。
参ったな〜ユカちゃん、とてもきれいで、いい子なんだけど、仕事不熱心なんだよね、むらっ気があってね。
俺も、雑用をしながら、あっちのお客さんについている女の子、こっちのお客さんについている女の子からのオーダーをさばきながら、彼らと話していた。よく笑う三人組だった。
「気がつかなくて、すいません、どうぞ…」と、三人目の中肉中背の普通のアキバ系君が、ウィスキーの口を開けて、俺に向けてくれた。
「ありがとうございます。いただきます。」と、俺は自分のグラスを用意していると、中肉君が、そのグラスを取って、なみなみとウィスキーを注いでくれた。
「いや、申しわけありません、そんなお客様に…」と恐縮していると。
「飲みましょう、だって置いておいても、また京都に来るかどうか…」と、全く理にかなったことを彼は言っていた。
彼についでもらったウィスキーをちびちびやりながら、彼らの相手をしていた。
「今日は、どこへ行ってこられたんですか?」と俺が言うと
ヒョロ君「ジャ〜ン」と言いながら、女性誌の別冊「京の旅」みたいなでかい本を鞄の中から出してきた。
「やるね〜」と、彼のお株を俺がもらうと、周りの二人は笑って喜んでくれた。するとヒョロ君
「いえいえ…」と、なかなか彼もやるもんだ。
俺たちのコミュニケーションもよくなってきたようだった。
三人で、その本を広げて、ここと、ここと、ここにも行ってきました。と、その別冊「京の旅」に出ている、なかなか趣味のいいお寺回りをしてきたらしい。
実は、そのころ、そういう小旅行のようなものがはやっていた。俺の同級生の女の子が、友達と二人で、やはり同じようにお寺回りに来て、いきなり、案内しろとつき合わされたこともあった。
なるほど…アキバ系のお寺回りか…そのアンバランスを率直に口にしてしまった。
「合わないねぇ〜」
「やっぱり、でしょう…」と、彼ら三人とも、少し誇らしげに言った。
「高尚やね」と言うと
「やっぱり、でしょう…」と、受けていた。

すると、今度は、丸顔アキバ君が、鞄の中からごそごそと、高級一眼レフを出して
「写真いっぱい撮ってきたんです」と、これまた誇らしげに
「えらい、上等なカメラやね、ペンタ?」と、言うと
「よく知ってますね」と、もっとうれしそうに
「俺、ミノルタ持ってる」と言うと
「なかなか、やりますねぇ〜」と丸アキバ君
「それで、三人で記念撮影したん?」
「まあね」と、三人が大笑いしていた。
結局、その日に、その1本を飲んで、終電の時間を気にしながら、彼らは、楽しいそうに帰っていった。
「また、京都に来たら寄ってくださいね」俺は丁寧に頭を下げた。
続きを読みたい方・おもしろかったと思っていただいた方は、
下のバナーをクリックしてください。
歯科大生の3人組は、楽しそうだった。
「よかった、よかった」俺はほっとした。
彼らに回してあげた女の子は、ユカちゃんと言って、モデルのバイトをやっていた子で、当然スラッとして格好いい子だった。ところが、話し出すと土地柄か、おっとりして、ちょっと天然で、そこがまた人気のあるところだった。
「歯医者さんにならはんのん?すごいねぇ〜」と京都弁で彼らの相手をしていた。
俺が、あちこち目を配りながら、グラスを磨いていると、三人組の一人が、俺に話しかけてきた。背の高い、ヒョロとした感じで、顔もまたヒョロッと長かった。
「あの〜ボトル入れると幾らになりますか?」
今となっては幾らだったか忘れてしまったが、多分、オールド程度のウィスキーで3800円だったような気がする。あのころは消費税もなく、酒税がやたら高くてウィスキーは高価な酒だった。
彼は、俺の言った値段を残りの二人にひそひそと話していた。結論が出たようで、そのヒョロ君が
「ほな、1本キープしてください」と注文をくれた。

「はい、ありがとうございます。オールド一本入りました。」と言うと、彼らの相手をしていたユカちゃんが「ハシモトさん、わたし取ってくるわ」と、俺と反対側の棚の方に行ってくれた。
その間に、俺は、彼らの前にあるビール瓶とグラスを片づけ、カウンターをふいていた。すると、ヒョロ君
「ハシモトさんっていうんですか?」と、俺の方を向いて言った。
「はい、そうです」と答えると。
「学生さんですよね」とまた聞いてきた。
「はい、同志社です」と答えると
「やるねぇ〜」と訳のわからないことを言っていた。
「いえいえ…」と、俺も訳のわからないことを答えた。
カウンターの主役は、あくまで女の子、俺たちカウンターに入っている男は、雑用係兼女の子の監視役みたいなところがある。やたら、客と話すのはあまりよくない。あくまで黒子に徹する。
すると、今度は丸い顔して、メガネをかけている。そうそう今のアキバ系の彼が、
「何学部ですか?」と尋ねてくれた。
「はい、工学部です」と答えると、すかさずヒョロ君が
「やるねぇ〜」とニコニコしている。そしてまた俺が
「いえいえ…」と、同じことを答えていた。
そんなこんなで、とうとう三人は、俺の方を向きだして、いろんな話をしてきた。すると、ユカちゃん、その雰囲気を見て、違うお客さんの相手をし出した。
参ったな〜ユカちゃん、とてもきれいで、いい子なんだけど、仕事不熱心なんだよね、むらっ気があってね。
俺も、雑用をしながら、あっちのお客さんについている女の子、こっちのお客さんについている女の子からのオーダーをさばきながら、彼らと話していた。よく笑う三人組だった。
「気がつかなくて、すいません、どうぞ…」と、三人目の中肉中背の普通のアキバ系君が、ウィスキーの口を開けて、俺に向けてくれた。
「ありがとうございます。いただきます。」と、俺は自分のグラスを用意していると、中肉君が、そのグラスを取って、なみなみとウィスキーを注いでくれた。
「いや、申しわけありません、そんなお客様に…」と恐縮していると。
「飲みましょう、だって置いておいても、また京都に来るかどうか…」と、全く理にかなったことを彼は言っていた。
彼についでもらったウィスキーをちびちびやりながら、彼らの相手をしていた。
「今日は、どこへ行ってこられたんですか?」と俺が言うと
ヒョロ君「ジャ〜ン」と言いながら、女性誌の別冊「京の旅」みたいなでかい本を鞄の中から出してきた。
「やるね〜」と、彼のお株を俺がもらうと、周りの二人は笑って喜んでくれた。するとヒョロ君
「いえいえ…」と、なかなか彼もやるもんだ。
俺たちのコミュニケーションもよくなってきたようだった。
三人で、その本を広げて、ここと、ここと、ここにも行ってきました。と、その別冊「京の旅」に出ている、なかなか趣味のいいお寺回りをしてきたらしい。
実は、そのころ、そういう小旅行のようなものがはやっていた。俺の同級生の女の子が、友達と二人で、やはり同じようにお寺回りに来て、いきなり、案内しろとつき合わされたこともあった。
なるほど…アキバ系のお寺回りか…そのアンバランスを率直に口にしてしまった。
「合わないねぇ〜」
「やっぱり、でしょう…」と、彼ら三人とも、少し誇らしげに言った。
「高尚やね」と言うと
「やっぱり、でしょう…」と、受けていた。

すると、今度は、丸顔アキバ君が、鞄の中からごそごそと、高級一眼レフを出して
「写真いっぱい撮ってきたんです」と、これまた誇らしげに
「えらい、上等なカメラやね、ペンタ?」と、言うと
「よく知ってますね」と、もっとうれしそうに
「俺、ミノルタ持ってる」と言うと
「なかなか、やりますねぇ〜」と丸アキバ君
「それで、三人で記念撮影したん?」
「まあね」と、三人が大笑いしていた。
結局、その日に、その1本を飲んで、終電の時間を気にしながら、彼らは、楽しいそうに帰っていった。
「また、京都に来たら寄ってくださいね」俺は丁寧に頭を下げた。
下のバナーをクリックしてください。








