■もう一つの8時18分 第24話「無意味なシミュレーション」
佐代子は、受付をしながら頭の中は、午後のことでいっぱいだった。
「はい、こちらの一番奥のエレベーターにお乗りいただいて、24階の左側でございます」受付に来る来客をさばきながらも、彼女の頭の中は
どうすれば…彼は私に…。チャンス、私を印象づけたい、見られるだけじゃ、もう嫌なの…。
「少々お待ちくださいませ、ただいま連絡いたします。」
「受付です。山中課長に、東邦金属の佐田部長様が、受付にお見えです」あくまで仕事をしながら…
もし、もし、彼が私の気持ちを察してハンカチを受け取ってくれたとすると…気があると思っているはず。そのまま、こっちが下手に出れば、ひょっとすると遊ばれてしまうかも。そんな軽い女に思われるわけにはいかないわ。そんなふうに思われるぐらいなら…。
だったら、朝のイメージを貫き通すしかないかな。シャキッと、今まで以上に近寄りがたい雰囲気を出せるかしら…。
「申しわけございません。こちらのご来賓様用のIDをおつけ願えますでしようか」
「はい、私どもと同じのように首から、このようにお願いいたします。」
それとも、ただの天然で間違ってハンカチを受け取ってしまったら…。それなら、こっちは軟攻でいった方が印象いいかしら。ニコッて笑顔をさりげなく…さりげなくってどういうのが、さりげないんだろう、どうやれば、さりげなく?歯を見せない、そうよね、歯を見せてニコッは、わざとらしいわ、そうよ、歯は見せない。
でも、もし、彼が「やぁ!」なんて、すっごくフランクに来ちゃったら…え〜どうしよう、そうよ、そのときは気品よね、ありったけの気品を繕って、しかも親愛の情を込めて…ってどうやればいいの?
そう、背筋をシャキッと伸ばして、少し小首をかしげて、若干斜めに黙礼じゃない。それよ、それ。
「はい、そちらのロビーで先ほどからお待ちになっておられます。いいえ、とんでもございません。」
全く無視されたら…あ〜そんなこと何も考えてなかった。あるよね、それもありだもんね。私のことなんか、実は頭に何もなくて…。私を見ても気づかなくて、ただ受付してはい、さよなら…。そんなことさせるもんですか、絶対に印象づけるんだから、で、どうすれば?「先日は…」と頭を下げる?いや〜わざとらしい、できないわよ、そんなこと。
彼が無視するようだったら…無視されるようだったら…だめかも
佐代子の頭の中は…ぐちゃぐちゃだった。
だが、この無意味なシミュレーションは、昼休みまでずっと続いたのであった。
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佐代子は、受付をしながら頭の中は、午後のことでいっぱいだった。
「はい、こちらの一番奥のエレベーターにお乗りいただいて、24階の左側でございます」受付に来る来客をさばきながらも、彼女の頭の中は
どうすれば…彼は私に…。チャンス、私を印象づけたい、見られるだけじゃ、もう嫌なの…。
「少々お待ちくださいませ、ただいま連絡いたします。」
「受付です。山中課長に、東邦金属の佐田部長様が、受付にお見えです」あくまで仕事をしながら…
もし、もし、彼が私の気持ちを察してハンカチを受け取ってくれたとすると…気があると思っているはず。そのまま、こっちが下手に出れば、ひょっとすると遊ばれてしまうかも。そんな軽い女に思われるわけにはいかないわ。そんなふうに思われるぐらいなら…。
だったら、朝のイメージを貫き通すしかないかな。シャキッと、今まで以上に近寄りがたい雰囲気を出せるかしら…。
「申しわけございません。こちらのご来賓様用のIDをおつけ願えますでしようか」
「はい、私どもと同じのように首から、このようにお願いいたします。」
それとも、ただの天然で間違ってハンカチを受け取ってしまったら…。それなら、こっちは軟攻でいった方が印象いいかしら。ニコッて笑顔をさりげなく…さりげなくってどういうのが、さりげないんだろう、どうやれば、さりげなく?歯を見せない、そうよね、歯を見せてニコッは、わざとらしいわ、そうよ、歯は見せない。
でも、もし、彼が「やぁ!」なんて、すっごくフランクに来ちゃったら…え〜どうしよう、そうよ、そのときは気品よね、ありったけの気品を繕って、しかも親愛の情を込めて…ってどうやればいいの?
そう、背筋をシャキッと伸ばして、少し小首をかしげて、若干斜めに黙礼じゃない。それよ、それ。
「はい、そちらのロビーで先ほどからお待ちになっておられます。いいえ、とんでもございません。」
全く無視されたら…あ〜そんなこと何も考えてなかった。あるよね、それもありだもんね。私のことなんか、実は頭に何もなくて…。私を見ても気づかなくて、ただ受付してはい、さよなら…。そんなことさせるもんですか、絶対に印象づけるんだから、で、どうすれば?「先日は…」と頭を下げる?いや〜わざとらしい、できないわよ、そんなこと。
彼が無視するようだったら…無視されるようだったら…だめかも
佐代子の頭の中は…ぐちゃぐちゃだった。
だが、この無意味なシミュレーションは、昼休みまでずっと続いたのであった。
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