■第29話 よくわからない人
うちのガキは長男も次男も、別にプロを目標にチームに入ったわけではないし、俺たち夫婦も毛頭そんなつもりはない。ただ、どうせ何かさせるなら、運動を、そして女房がJリーグの開会式が格好よかったから、たまたまサッカーをと、そんな感じで選んだだけだ。
だから、普段はフツーに生活している。みんなそうだし、当たり前のことだ。毎日仕事をして、土日にはサッカーのサポータをやる。それ以外は周りの人たちと同じように、地区の役員が回ってくればやるし、PTAの役も引き受けた。普通だからだ。
ところが…普通でない人がいるのだ。一切に役をやらない。受けない。これは情報通のあるお母さんから聞いた話だが、ある学校のPTAの席でうちのチームのおかあさん、順番が回ってきて、どうしても今年、PTAの役を引き受けなければならなかった。しかし、そのお母さん、頑として拒否するのだ。
周りは説得した。当然だ、自分たちはちゃんと面倒な役を引き受け、1年間務めたわけだから、「なぁに〜それ、あんただけやらないなんて、ふざけんじゃないわよ」と思うのが自然。しかし、だんだん厳しくなる周りの言葉にも、そのお母さん頑として立ち向かったという。
そしてついに、委員長だか、部長だか、上の人に、あなたがやるべきだと決定されたという。そのとき、そのおかあさん、涙を流し、こう訴えたそうだ。
「私たち家族の夢をどうして壊そうとなさるのですか…」と。
何言ってんだ、このお母さん?みんなそう思ったに違いない。その夫婦を知らないからだ。その夫婦は本気で息子をプロ選手にしようとしていたのだった。
目指せプロの親がいるのだ。都会ならば、それなりのJリーグの下部組織のチームにでも入れるのだろうが、田舎にはそんなものはない。仕方なく、このチームにいるのだろう、だが社会人としてやるべきことはやらなければならない。当たり前のことをやれと言われて「家族の夢をどうして壊そうとなさるのですか…」と言ってしまうお母さん。あなたに育てられた、そのボクちゃんは、大人になって…プロになろうが、なるまいが、それはそれとして、ちゃんと生きていけるのだろうか?
あの夫婦は、どうしても俺には「よくわからない人」だった。
<少年サッカー編>
続きを読みたい方・おもしろかったと思っていただいた方は、
下のバナーをクリックしてください。
うちのガキは長男も次男も、別にプロを目標にチームに入ったわけではないし、俺たち夫婦も毛頭そんなつもりはない。ただ、どうせ何かさせるなら、運動を、そして女房がJリーグの開会式が格好よかったから、たまたまサッカーをと、そんな感じで選んだだけだ。
だから、普段はフツーに生活している。みんなそうだし、当たり前のことだ。毎日仕事をして、土日にはサッカーのサポータをやる。それ以外は周りの人たちと同じように、地区の役員が回ってくればやるし、PTAの役も引き受けた。普通だからだ。
ところが…普通でない人がいるのだ。一切に役をやらない。受けない。これは情報通のあるお母さんから聞いた話だが、ある学校のPTAの席でうちのチームのおかあさん、順番が回ってきて、どうしても今年、PTAの役を引き受けなければならなかった。しかし、そのお母さん、頑として拒否するのだ。
周りは説得した。当然だ、自分たちはちゃんと面倒な役を引き受け、1年間務めたわけだから、「なぁに〜それ、あんただけやらないなんて、ふざけんじゃないわよ」と思うのが自然。しかし、だんだん厳しくなる周りの言葉にも、そのお母さん頑として立ち向かったという。
そしてついに、委員長だか、部長だか、上の人に、あなたがやるべきだと決定されたという。そのとき、そのおかあさん、涙を流し、こう訴えたそうだ。
「私たち家族の夢をどうして壊そうとなさるのですか…」と。
何言ってんだ、このお母さん?みんなそう思ったに違いない。その夫婦を知らないからだ。その夫婦は本気で息子をプロ選手にしようとしていたのだった。
目指せプロの親がいるのだ。都会ならば、それなりのJリーグの下部組織のチームにでも入れるのだろうが、田舎にはそんなものはない。仕方なく、このチームにいるのだろう、だが社会人としてやるべきことはやらなければならない。当たり前のことをやれと言われて「家族の夢をどうして壊そうとなさるのですか…」と言ってしまうお母さん。あなたに育てられた、そのボクちゃんは、大人になって…プロになろうが、なるまいが、それはそれとして、ちゃんと生きていけるのだろうか?
あの夫婦は、どうしても俺には「よくわからない人」だった。
<少年サッカー編>
下のバナーをクリックしてください。








