■もう一つの8時18分 第34話「田嶋さん」
映画が終わり、一斉に客たちが席を立った。佐代子も、席を立ち、狭い通路を彼の後ろについていった。扉を出ると、彼の方からまぶしい光が差し込んできた。
シネタワーを出て、二人は立ち止まった。
「近くにかわいい喫茶店があるらしいんですよ。行ってみませんか?」彼は、佐代子に言った。
彼と今度は並んで歩いた。チラチラと佐代子の方を向く彼、そのたび、佐代子もこれ以上は無理というぐらい、にこやかに彼の方を向いた。
彼の「ここだ」という声に、彼の視線を追うと、かわいい喫茶店があった。でも、窓から見える中の様子ではかなり込んでいるように見えた。
ドアを開けて店の中に入った彼に続いていくと
「いや〜混んでいるね」彼の少々困った表情に
彼がこんなお店にいつも来ているはずもなく、佐代子は今日のために調べてくれたらしい、このお店のことを聞いてあげたくなった。
「すごい人気、何か有名なものでもあるのかしら?」
彼は「ここのちっちゃい、あの、何だっけ、ケーキみたいなのが人気らしいです」と正直に自分が初めてきたことをさらっと流して言った。
佐代子「ティラミス?」
「そうそう、それそれ」と、まだ店の奥の方を見ながら彼は答えた。
「へえ、残念だわ、私も食べてみたかったな〜」佐代子はちゃんと準備をしてくれたことに感謝を込めて言った。
「じゃあ、待つ?」と意外な彼の答えに、その時間がもったいないなんて思ってしまった。女の子同士で来るなら待ちたいけど、あなたとの時間はもっと楽しく過ごしたい、そんな気持ちになっていた。
佐代子「でも、1時間ぐらいかかりそうですね」と彼に出ようと促す。
「じゃあ、別の所にしましょう」と彼もあっさりと。佐代子は、彼のこのあっさりしたところがとても気に入ってきた。
「はい。ここはまた今度…あっ、ごめんなさい、また今度だなんて」
本心だった。「今度」また彼とここに来たかった。
「そう、また今度にしましよう、絶対、今度ですよ」と彼は言った。佐代子は、自分の言ったちょっとブリっ子の一言に、彼が子供のように喜んでくれたことがうれしかった。
店の外に出ると、彼はキョロキョロと周りを見回し、道の向かい側の喫茶店を指さして
「あっちに行きませんか」と佐代子を誘った。
横断歩道でもないところを、無理やり渡っていく彼、追いかけるようについていく佐代子、ちょっとしたスリルが、佐代子の息を弾ませた。

彼が、喫茶店のドアを開けると「カランコロン」とカウベルが鳴り、中へ入ると、ふわっとしたコーヒーの香りに包まれた。
「なかなかいいね」彼が言った。
「歴史がありそう」佐代子は彼の方を見て言った。
彼が席につき、佐代子も向かいの席についた。佐代子は近くにあるメニューを彼に渡した。
店員が注文を取りにきた。彼はモカを佐代子はキリマンジェロを頼んだ。
彼は、窓の外を見たり、佐代子の方を見たりしているが、何も言わなかった。
何を考えているのかしら?話のきっかけが見つからないの?ちょっと佐代子は心配になってきた。でも、こちらからしゃしゃり出ない方がいいわよね…。
彼は、店員が持ってきたコーヒーを一口飲んで「うまい…」と小さな声で言った。
佐代子は、やっと出たその一言がうれしくなって、同じように
「おいし〜」そう言って彼の次の言葉を待った。「ああ、うまいね、ここのコーヒー、よかった」彼が言った。
佐代子は、映画を見ていた彼の表情が気になって尋ねてみたくなった。
「田嶋さん…」
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映画が終わり、一斉に客たちが席を立った。佐代子も、席を立ち、狭い通路を彼の後ろについていった。扉を出ると、彼の方からまぶしい光が差し込んできた。
シネタワーを出て、二人は立ち止まった。
「近くにかわいい喫茶店があるらしいんですよ。行ってみませんか?」彼は、佐代子に言った。
彼と今度は並んで歩いた。チラチラと佐代子の方を向く彼、そのたび、佐代子もこれ以上は無理というぐらい、にこやかに彼の方を向いた。
彼の「ここだ」という声に、彼の視線を追うと、かわいい喫茶店があった。でも、窓から見える中の様子ではかなり込んでいるように見えた。
ドアを開けて店の中に入った彼に続いていくと
「いや〜混んでいるね」彼の少々困った表情に
彼がこんなお店にいつも来ているはずもなく、佐代子は今日のために調べてくれたらしい、このお店のことを聞いてあげたくなった。
「すごい人気、何か有名なものでもあるのかしら?」

彼は「ここのちっちゃい、あの、何だっけ、ケーキみたいなのが人気らしいです」と正直に自分が初めてきたことをさらっと流して言った。
佐代子「ティラミス?」
「そうそう、それそれ」と、まだ店の奥の方を見ながら彼は答えた。
「へえ、残念だわ、私も食べてみたかったな〜」佐代子はちゃんと準備をしてくれたことに感謝を込めて言った。
「じゃあ、待つ?」と意外な彼の答えに、その時間がもったいないなんて思ってしまった。女の子同士で来るなら待ちたいけど、あなたとの時間はもっと楽しく過ごしたい、そんな気持ちになっていた。
佐代子「でも、1時間ぐらいかかりそうですね」と彼に出ようと促す。
「じゃあ、別の所にしましょう」と彼もあっさりと。佐代子は、彼のこのあっさりしたところがとても気に入ってきた。
「はい。ここはまた今度…あっ、ごめんなさい、また今度だなんて」
本心だった。「今度」また彼とここに来たかった。
「そう、また今度にしましよう、絶対、今度ですよ」と彼は言った。佐代子は、自分の言ったちょっとブリっ子の一言に、彼が子供のように喜んでくれたことがうれしかった。
店の外に出ると、彼はキョロキョロと周りを見回し、道の向かい側の喫茶店を指さして
「あっちに行きませんか」と佐代子を誘った。
横断歩道でもないところを、無理やり渡っていく彼、追いかけるようについていく佐代子、ちょっとしたスリルが、佐代子の息を弾ませた。

彼が、喫茶店のドアを開けると「カランコロン」とカウベルが鳴り、中へ入ると、ふわっとしたコーヒーの香りに包まれた。
「なかなかいいね」彼が言った。
「歴史がありそう」佐代子は彼の方を見て言った。
彼が席につき、佐代子も向かいの席についた。佐代子は近くにあるメニューを彼に渡した。
店員が注文を取りにきた。彼はモカを佐代子はキリマンジェロを頼んだ。
彼は、窓の外を見たり、佐代子の方を見たりしているが、何も言わなかった。
何を考えているのかしら?話のきっかけが見つからないの?ちょっと佐代子は心配になってきた。でも、こちらからしゃしゃり出ない方がいいわよね…。
彼は、店員が持ってきたコーヒーを一口飲んで「うまい…」と小さな声で言った。

佐代子は、やっと出たその一言がうれしくなって、同じように
「おいし〜」そう言って彼の次の言葉を待った。「ああ、うまいね、ここのコーヒー、よかった」彼が言った。
佐代子は、映画を見ていた彼の表情が気になって尋ねてみたくなった。
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