■もう一つの8時18分 第36話「寸止め」
「…実はさ」彼が、佐代子の方を見て話し始めた。
「…はい」佐代子は、嫌な胸騒ぎがした。
「あのハンカチ…」彼は言葉を続けた。
「はぁ?」佐代子は、できれば避けてとおりたい話題に、そらぞらしく答えた。
「君に拾ってもらった、あのハンカチ」
「はい、あれがどうかなさったんですか?」
(お願い、そこまでにして…どうすればいいの、どう言えばいいの?)
「…あれは僕のじゃなかったんだ…」彼は、言ってしまった。
佐代子は対処に困った。
(なんで、そんなところ正直なのよ…どうするのよ、滅茶苦茶になっちゃうじゃない。私の勘違いにすればいいの?)
しばらく二人の会話は切れた
「実は…」彼が再び話し始めた。
さて、どうしよう、そればかり考えていた佐代子は、彼の強い語気に驚いて上を向いた。自分の目を真っ正面から見て、懸命に何かを訴えようとしている。佐代子は、その気迫に飲まれた。
彼は、続けた…
「俺、ずっと前から佐代子さんを知っていたんです。とてもきれいな人で、あこがれていて、ずっと佐代子さんに逢うために、僕はいつも8時18分にあそこを歩いていたんです。」
佐代子は、驚いた。そして自分の顔がどんどん紅潮していくのがわかった。
「ずっと、いつか声をかけたいと思って、でも、なかなか勇気がなくて、でも、次の日にきっとあなたをデートに誘おうと決心したんです。」
(えっ、そうなの、そうだったんだ。)
「仕事もしないで、そのことばかり考えていて、そうしたら、その日に、なぜかあなたが受付にいて、そうしたらいきなりだったから、でも、ここで通り過ぎたら、一生後悔すると思ったら、そうしたらずっと練習してきた言葉がスラスラ出てきて…。」
(…だって、私だって、一生懸命だったのよ)
「あっ、違った、ハンカチの話だ。ハンカチは…僕のじゃなくて、でも、佐代子さんと少しでも話がしたくて、つい、つい…ありがとうって、自分のものにしちゃって、あれは僕のじゃないんです。」
(うれしくて…涙が出てきそうだった。もうだめ…私の負け、ごめんなさい。全部白状します。)
「…知っていました」佐代子は観念した。
「え?…知ってたって?」彼は、驚き、戸惑っていた。
(待って、全部白状することないよね、ハンカチよ、ハンカチの話だけでいいのよ…)
「あれは、私の兄のものなんです」佐代子は、下を向いたまま言った。
彼は、キョトンとしたまま何も言葉が出てこなかった。
(だから…まだわからないの…どこまで言えばいいの、もう許して、お願い)
「卓さんに、声をかけて…」佐代子は、そのまま下を向いてだまった。
「え、じゃあ、あれは佐代子さんが僕と話をするために?」彼は、すまなさそうに小さな声で、自分の言葉に全く自信がない表情をしながら、佐代子の目をじっと見詰めて聞いた。
佐代子はコクンと、小首を下げた。
(どうなるの…これから?)
佐代子は、上目づかいで彼の表情を盗もうとしていた。
(ホッとした表情よね、怒ってないわよね…大丈夫かも)
「ごめんなさい」上目づかいのまま、彼にわびた。
「い、いや、いいんだ。でも、まさか、俺そんな…」彼は、どんどんいいように解釈してくれているようだった。
「そうか、そうだったんだ。」彼が、納得するように、そして表情がぐっと明るくなっていくのがわかった。
ふ〜…危なかった
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「…実はさ」彼が、佐代子の方を見て話し始めた。
「…はい」佐代子は、嫌な胸騒ぎがした。
「あのハンカチ…」彼は言葉を続けた。
「はぁ?」佐代子は、できれば避けてとおりたい話題に、そらぞらしく答えた。
「君に拾ってもらった、あのハンカチ」
「はい、あれがどうかなさったんですか?」
(お願い、そこまでにして…どうすればいいの、どう言えばいいの?)
「…あれは僕のじゃなかったんだ…」彼は、言ってしまった。
佐代子は対処に困った。
(なんで、そんなところ正直なのよ…どうするのよ、滅茶苦茶になっちゃうじゃない。私の勘違いにすればいいの?)
しばらく二人の会話は切れた
「実は…」彼が再び話し始めた。
さて、どうしよう、そればかり考えていた佐代子は、彼の強い語気に驚いて上を向いた。自分の目を真っ正面から見て、懸命に何かを訴えようとしている。佐代子は、その気迫に飲まれた。
彼は、続けた…
「俺、ずっと前から佐代子さんを知っていたんです。とてもきれいな人で、あこがれていて、ずっと佐代子さんに逢うために、僕はいつも8時18分にあそこを歩いていたんです。」
佐代子は、驚いた。そして自分の顔がどんどん紅潮していくのがわかった。
「ずっと、いつか声をかけたいと思って、でも、なかなか勇気がなくて、でも、次の日にきっとあなたをデートに誘おうと決心したんです。」
(えっ、そうなの、そうだったんだ。)
「仕事もしないで、そのことばかり考えていて、そうしたら、その日に、なぜかあなたが受付にいて、そうしたらいきなりだったから、でも、ここで通り過ぎたら、一生後悔すると思ったら、そうしたらずっと練習してきた言葉がスラスラ出てきて…。」
(…だって、私だって、一生懸命だったのよ)
「あっ、違った、ハンカチの話だ。ハンカチは…僕のじゃなくて、でも、佐代子さんと少しでも話がしたくて、つい、つい…ありがとうって、自分のものにしちゃって、あれは僕のじゃないんです。」
(うれしくて…涙が出てきそうだった。もうだめ…私の負け、ごめんなさい。全部白状します。)
「…知っていました」佐代子は観念した。
「え?…知ってたって?」彼は、驚き、戸惑っていた。
(待って、全部白状することないよね、ハンカチよ、ハンカチの話だけでいいのよ…)
「あれは、私の兄のものなんです」佐代子は、下を向いたまま言った。
彼は、キョトンとしたまま何も言葉が出てこなかった。
(だから…まだわからないの…どこまで言えばいいの、もう許して、お願い)
「卓さんに、声をかけて…」佐代子は、そのまま下を向いてだまった。
「え、じゃあ、あれは佐代子さんが僕と話をするために?」彼は、すまなさそうに小さな声で、自分の言葉に全く自信がない表情をしながら、佐代子の目をじっと見詰めて聞いた。
佐代子はコクンと、小首を下げた。
(どうなるの…これから?)
佐代子は、上目づかいで彼の表情を盗もうとしていた。
(ホッとした表情よね、怒ってないわよね…大丈夫かも)
「ごめんなさい」上目づかいのまま、彼にわびた。
「い、いや、いいんだ。でも、まさか、俺そんな…」彼は、どんどんいいように解釈してくれているようだった。
「そうか、そうだったんだ。」彼が、納得するように、そして表情がぐっと明るくなっていくのがわかった。
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