■青春の探検部「最弱の瀬」
朝食のおじやを食いながら、小歩危の講義を先輩から聞いていた。大先輩、どうも朝が苦手、よって朝は機嫌が悪い。
「ハシモト…まずい」と吐き捨てるように言われた。人がせっかく…テキトーに作ったおじやを、バチが当たればいいんだなんて思った。
うちの探検部の名物、朝5秒おじや、夕べ残った飯に、水を足して粉末のみそ汁をぶっかけて、「ハイ、できあがり、どうぞ、召し上がれ!」そんなものうまいわけがないのだ。おっと誤解があっては困るので言っておくが、みそ汁のはうまいんだ、ただ…俺が下手だっただけ…ね。
「ちょっと味噌が足りなかったですねぇ、すみません」と素直に謝るところが、俺らしい。
大先輩、朝が弱いのは、きっとチェンマイで3カ月も自堕落な生活を送っていたからなんだと、勝手に想像していた。
大先輩の講義が始まった。
「小歩危は落差がある、ちょっと斜めに落ちると、そのままボートがグニャとなって横向く、瀬に近いヤツが落ちるパターン」
俺たちは真剣に聞いた。ワクワクするような、ドキドキするような…不思議な気分だった。
さらに大先輩が続けた
「岩が左右にある、初めから避けるためにどっちに寄りすぎても、後の岩に激突する。ギリギリを通って、オールで岩を突きながらすり抜けるようにする。」
なんか、だんだん技術的な話で格好いい話になってきた。大先輩がこと細かに技術的な話をするなんて…なかったなあ〜今まで。
「あ〜まずかった」一言いわないと気が済まないのか、この大先輩…。
テントをたたみ、装備をボートに積み込み、全員がボートに乗った。
「さあ、行こケ〜」大先輩のかけ声とともに、俺がボートを押した。ボートは川の流れに乗った。昨日より、少し水かさが多いような気がする。俺の気のせいか?
しばらくすると、先輩の言っていた鉄橋が見えてきた。通称「鉄橋の瀬」に近づいてきた。無言の4人に少なからず緊張が高まってきた。
ぐっと、川が曲がりだした。右カーブを描いている瀬、どんどんボートのスピードが増す。水は左岸に寄っていく、もちろんボートもそっちに引っ張られる。その中で舵が切れるようにするためには、推力をつけ前進する必要があった。前の2人は…それでも、まだ余裕の表情で漕いでいた。舵を切り、どんどん狭く、急流になっていく流れの真ん中をねらって舵を切る。
見えてきた、前方に川が真っ白になっているところ…瀬だ
待っていたかのように、ソノダが大声を上げた。「セー、セー、前方に瀬」
ソノダの声に
「オーシ」俺たち3人が声を返す。さあ来たで〜このために、ずっと練習してきた。昨日の大歩危まで訓練させられた。やったろうやないか!
「ザ〜」水音がどんどんでかくなってくる。
来るぞ、来るぞ…ぐっと水が盛り上がっている、その向こうはただ泡で真っ白にしか見えない。落差がかなりあるようだ。
俺はただボートを真っすぐにする。そのことだけに集中した。
「行くでぇ〜」大先輩の大声の奇声が聞こえた。
「オォォォー」と、自然に腹の底から出てくる自分たちの声、その大声ですら水音でかき消されてしまうほどだった。
と、同時にボートは瀬に真っ正面から突っ込んだ。ザァ〜ザァ〜ザァ〜ザァ〜ザァ〜もう水音しか聞こえない。
ボートは、真っ逆さまに落ちるような形で突っ込んだ。前の2人が前に落ちていくように俺には見えた。俺たち2人は反対にグッと上に持ち上げられ、オールと体でバランスを取りながら、全員が後ろに精いっぱい重心をかける。
次の瞬間、水中に突っ込んだボートの前の部分が浮力で頭をもたげ、グンと前方がバウンドするように激しく浮く。みんなこのバウンドで振り落とされないように、ボートにつけられた足かけにグッと力を入れて体を固定し、腰を浮かしてバランスをとる。
ここの瀬は二段になっていた。一つ目の瀬を過ごすときに、やはり流れのために若干右に向いてしまったボートを立て直すために左バックの俺は懸命にオールでバックに入れた。グッと方向を修正しながら、何とかうまく突入したと思った…。
しかし、グッとブレーキを掛けたような重さを感じた、ボートが川底の浅い岩に底をすっていた。まずい…俺の真下を中心にボートは流れに押されグッグッと回転を始めた。
「前、漕げ、ハシモト岩を突け!脱出せぇ〜」大先輩の大声で、俺はオールで川底の岩を渾身の力で押した。見ると大先輩も俺の方の川底を必死に押していた。グッグッ…とボートが回りながら流れに乗って進み出す。
…まずいボートが流れに対してどんどん斜めになっていく、このまま突っ込めば
…確実に転覆
「ボケッ、ハシモト、何してんのど、突け、もっと突かんかい!」
「はぁ〜い」必死だった。オールを脇に抱え、棒高跳びのようにして、全体重をオールにかけた。もう自分の体が半分浮いていた。それでも足りないのか?…チクショー!
「ウォー!」大声を出して足とボートを固定してあるバンドを思いっきり引っ張った。杖にしたオールを支点に、足の甲でボートを引っ張り上げたような格好になった。
グッググググ…ボートは岩から脱した。
すかさず大先輩、舵を切りボートを立て直すべく、全力でバックに入れた。ボートは頭を流れの方に向けながら瀬に突っ込んだ。
半立ち状態で突っ込んだ俺はバランスを崩して、ぶさいくにも、前のめりになり、オールを持ったまま、ボートの真ん中に積んである装備に頭から突っ込んでいった。足の固定バンドも外れ、体が固定できない。ボートの中で転がりながら、必死に装備に片手でつかまった。ドーンという衝撃があって体が一瞬浮いた…頭から水をかぶり、上を向いたときには、既に瀬を無事パスしていた。
「ハシモト、ハシモト、つかまれ」大先輩が手を出してくれた。見ると、前の二人も片手で俺の手や服をしっかり握ってくれていた。俺はすぐに、起き上がり、固定バンドに足を通し、ボートの自分の位置につくことができた。
「ハァハァハァハァハァハァ…すみません…」俺の口から自然に出た
「ちょっと休憩や」大先輩の声に、流れの緩い場所に向かった。
「ハシモト、大丈夫か?」前のソノダが、振り返って心配そうに尋ねた。
「…あかん…俺、もういかれると思もた…ビビッた」と俺
「よう、やった、オールでボート引き上げたヤツ見たことないわ…ハハハ!」大先輩が褒めてくれた?
「信じられへんしネェ〜、もうアカン思ったしネ、ハシモトは後ろから飛んできやがるし、お前、俺の背中にしこたま頭突き食らわしたしネェ」と2年生が笑いながら後ろを振り返った。
「え?うそでしょう?」と俺
「アホ、お前はヘルメットかぶってるし、痛ないんや、滅茶苦茶痛かったしネェ」と2年生
そして、めいめいポケットの中のビニール袋に入れてあるたばこにつけた。
「ふ〜」みんなうまそうにたばこを吸っていた。
「さすが、小歩危最弱の瀬やな」大先輩が言った。
…ほんまかよ
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朝食のおじやを食いながら、小歩危の講義を先輩から聞いていた。大先輩、どうも朝が苦手、よって朝は機嫌が悪い。
「ハシモト…まずい」と吐き捨てるように言われた。人がせっかく…テキトーに作ったおじやを、バチが当たればいいんだなんて思った。

うちの探検部の名物、朝5秒おじや、夕べ残った飯に、水を足して粉末のみそ汁をぶっかけて、「ハイ、できあがり、どうぞ、召し上がれ!」そんなものうまいわけがないのだ。おっと誤解があっては困るので言っておくが、みそ汁のはうまいんだ、ただ…俺が下手だっただけ…ね。
「ちょっと味噌が足りなかったですねぇ、すみません」と素直に謝るところが、俺らしい。
大先輩、朝が弱いのは、きっとチェンマイで3カ月も自堕落な生活を送っていたからなんだと、勝手に想像していた。
大先輩の講義が始まった。
「小歩危は落差がある、ちょっと斜めに落ちると、そのままボートがグニャとなって横向く、瀬に近いヤツが落ちるパターン」
俺たちは真剣に聞いた。ワクワクするような、ドキドキするような…不思議な気分だった。
さらに大先輩が続けた
「岩が左右にある、初めから避けるためにどっちに寄りすぎても、後の岩に激突する。ギリギリを通って、オールで岩を突きながらすり抜けるようにする。」
なんか、だんだん技術的な話で格好いい話になってきた。大先輩がこと細かに技術的な話をするなんて…なかったなあ〜今まで。
「あ〜まずかった」一言いわないと気が済まないのか、この大先輩…。
テントをたたみ、装備をボートに積み込み、全員がボートに乗った。
「さあ、行こケ〜」大先輩のかけ声とともに、俺がボートを押した。ボートは川の流れに乗った。昨日より、少し水かさが多いような気がする。俺の気のせいか?
しばらくすると、先輩の言っていた鉄橋が見えてきた。通称「鉄橋の瀬」に近づいてきた。無言の4人に少なからず緊張が高まってきた。
ぐっと、川が曲がりだした。右カーブを描いている瀬、どんどんボートのスピードが増す。水は左岸に寄っていく、もちろんボートもそっちに引っ張られる。その中で舵が切れるようにするためには、推力をつけ前進する必要があった。前の2人は…それでも、まだ余裕の表情で漕いでいた。舵を切り、どんどん狭く、急流になっていく流れの真ん中をねらって舵を切る。

見えてきた、前方に川が真っ白になっているところ…瀬だ
待っていたかのように、ソノダが大声を上げた。「セー、セー、前方に瀬」
ソノダの声に
「オーシ」俺たち3人が声を返す。さあ来たで〜このために、ずっと練習してきた。昨日の大歩危まで訓練させられた。やったろうやないか!
「ザ〜」水音がどんどんでかくなってくる。
来るぞ、来るぞ…ぐっと水が盛り上がっている、その向こうはただ泡で真っ白にしか見えない。落差がかなりあるようだ。
俺はただボートを真っすぐにする。そのことだけに集中した。
「行くでぇ〜」大先輩の大声の奇声が聞こえた。
「オォォォー」と、自然に腹の底から出てくる自分たちの声、その大声ですら水音でかき消されてしまうほどだった。
と、同時にボートは瀬に真っ正面から突っ込んだ。ザァ〜ザァ〜ザァ〜ザァ〜ザァ〜もう水音しか聞こえない。
ボートは、真っ逆さまに落ちるような形で突っ込んだ。前の2人が前に落ちていくように俺には見えた。俺たち2人は反対にグッと上に持ち上げられ、オールと体でバランスを取りながら、全員が後ろに精いっぱい重心をかける。
次の瞬間、水中に突っ込んだボートの前の部分が浮力で頭をもたげ、グンと前方がバウンドするように激しく浮く。みんなこのバウンドで振り落とされないように、ボートにつけられた足かけにグッと力を入れて体を固定し、腰を浮かしてバランスをとる。
ここの瀬は二段になっていた。一つ目の瀬を過ごすときに、やはり流れのために若干右に向いてしまったボートを立て直すために左バックの俺は懸命にオールでバックに入れた。グッと方向を修正しながら、何とかうまく突入したと思った…。
しかし、グッとブレーキを掛けたような重さを感じた、ボートが川底の浅い岩に底をすっていた。まずい…俺の真下を中心にボートは流れに押されグッグッと回転を始めた。
「前、漕げ、ハシモト岩を突け!脱出せぇ〜」大先輩の大声で、俺はオールで川底の岩を渾身の力で押した。見ると大先輩も俺の方の川底を必死に押していた。グッグッ…とボートが回りながら流れに乗って進み出す。
…まずいボートが流れに対してどんどん斜めになっていく、このまま突っ込めば
…確実に転覆
「ボケッ、ハシモト、何してんのど、突け、もっと突かんかい!」
「はぁ〜い」必死だった。オールを脇に抱え、棒高跳びのようにして、全体重をオールにかけた。もう自分の体が半分浮いていた。それでも足りないのか?…チクショー!
「ウォー!」大声を出して足とボートを固定してあるバンドを思いっきり引っ張った。杖にしたオールを支点に、足の甲でボートを引っ張り上げたような格好になった。
グッググググ…ボートは岩から脱した。
すかさず大先輩、舵を切りボートを立て直すべく、全力でバックに入れた。ボートは頭を流れの方に向けながら瀬に突っ込んだ。
半立ち状態で突っ込んだ俺はバランスを崩して、ぶさいくにも、前のめりになり、オールを持ったまま、ボートの真ん中に積んである装備に頭から突っ込んでいった。足の固定バンドも外れ、体が固定できない。ボートの中で転がりながら、必死に装備に片手でつかまった。ドーンという衝撃があって体が一瞬浮いた…頭から水をかぶり、上を向いたときには、既に瀬を無事パスしていた。
「ハシモト、ハシモト、つかまれ」大先輩が手を出してくれた。見ると、前の二人も片手で俺の手や服をしっかり握ってくれていた。俺はすぐに、起き上がり、固定バンドに足を通し、ボートの自分の位置につくことができた。
「ハァハァハァハァハァハァ…すみません…」俺の口から自然に出た
「ちょっと休憩や」大先輩の声に、流れの緩い場所に向かった。
「ハシモト、大丈夫か?」前のソノダが、振り返って心配そうに尋ねた。
「…あかん…俺、もういかれると思もた…ビビッた」と俺
「よう、やった、オールでボート引き上げたヤツ見たことないわ…ハハハ!」大先輩が褒めてくれた?

「信じられへんしネェ〜、もうアカン思ったしネ、ハシモトは後ろから飛んできやがるし、お前、俺の背中にしこたま頭突き食らわしたしネェ」と2年生が笑いながら後ろを振り返った。
「え?うそでしょう?」と俺
「アホ、お前はヘルメットかぶってるし、痛ないんや、滅茶苦茶痛かったしネェ」と2年生
そして、めいめいポケットの中のビニール袋に入れてあるたばこにつけた。
「ふ〜」みんなうまそうにたばこを吸っていた。
「さすが、小歩危最弱の瀬やな」大先輩が言った。
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