■青春の探検部「名誉のパンツ」
休憩が終わり、次の瀬に向かうべく、ボートを出した。
幾つかの瀬を越え、俺たち1年生は自信というほどのことではないのだが、多少なりとも手ごたえのようなものを持つことができた。
さて時間はたち、次の瀬が迫ってくる。このあたりからは次々と迫力ある瀬が続いていくことになる。小歩危の駅のあたりを越えると、大先輩が言った。
「一発目は真ん中にデ〜ンと岩があるんや、右から入るど!」
「はぁ〜い」と俺たちが大声で返事をする。
「細いとこやど、真っすぐボートを入れんと、お釈迦しね」大先輩は続けた。
そして、すぐに迫ってきたのが二段の瀬、おっと本当にど真ん中あたりにでっかい岩、そして右側はどでかい岩の壁、その間のボート1艇半ぐらいのコース…まずいで、これは。
「漕げ!!」大先輩の号令とともに、一斉に全力で漕ぎ、舵を切る。コースに対してまっすぐに入れるかどうか、入れば、そのまま行けそうだ。
ボートは流れの右側にグッと寄った。流れに真っすぐにするため、大先輩一気にバックをかける。グッっとボートの先は瀬の中心に向いた。

「いくでぇ〜!」大先輩の号令に
「オ〜!」と、慣れてきた俺たちは、スリルを楽しむように突っ込んで行った。
「オッ〜オオオォォォ」自然にわき出る大声、真っ逆さまに落ちていくボート、先が着水し、その反動のショックがすさまじかった。後ろの大先輩と俺は、生き物のように跳ねるボートに振り飛ばされそうになりながら、片足だけ突っ込んだストッパーのおかげで何とかしのいだ。
「バッシャ〜ン…」ボート全体が、滝に落ちた。その瞬間、ボートは左に大きく振られた。左バックの俺は水面にどっぷり浸かり、ボートの右側が浮いている。
「あかん…いかれる…」そう思った。体の全体重をボートの内側に、大先輩はそっくりかえって全体重を外側にかけた。浮き上がった右側がグラグラッ…グラと振られながら、「バッシャ〜ン」と無事着水、転覆は免れた。ホッとした瞬間、大変なものを見てしまった。
「アアアアッ…防水バッグが…」俺の大声で全員が俺を振り返った。俺が流れていくバッグの方に視線を向けると
みんながバッグを見ながら声が出ない。
「あほッ、そんなことより漕げ、巻き込まれるやんけ」大先輩の号令に、ハッと目が覚めた。ボートを出さなければ、岩の影にできた渦にのまれてしまう…漕いだ。またまた全力で漕いだ。
やっと、瀬を越え、防水バッグを追う
「ヨッセ、ヨッセ、ヨッセ、ヨッセ、ヨッセ…」かけ声とともに防水バッグ目がけてボートを走らす。…走るなんて格好いい、ヨットみたいな表現だが、どれだけしんどいか、あんな水の抵抗のお化けのようなものを4人で漕いで、前に出すこと自体に無理があるんだ。だが、漕いだ。あの防水バッグの中には全員のシュラフ、着替えなどが入っている。もし、取れなければ…この格好で京都まで帰らなければならないからだ。
やっと防水バッグに追いついた。するといきなり
「偉い、ソノダ偉い…ソノダ、ソノダ、ソノダ、ソノダ」他の3人のソノダコールに
いや〜な顔をしていたソノダも根負けしたのか、仕方なく川に飛び込んだ。
ソノダは、ガンガン泳いで、バックを確保、そのまま岸に上がった。我々もボートを岸につけようとしたが、結構、流されてしまって、ソノダの位置から30メートルほど下流で岸についた。
ソノダの様子がおかしい…やたら重そうに防水バックを担いでいる。怪力なんだぞ、ソノダは…もしや…嫌な予感がした。
ソノダが、来た。
「バッグ、破れとるがな〜」
「ウッソ〜」大先輩を目をまん丸にして言った。
「ほれ、ここだがな」ソノダが、破れているところを見せた。
見ると、バッグのけつの部分がパックリ口を開けていた。
「中身出せ…」大先輩の指示に俺がバックの口を開き、中身を1つずつ出してソノダが広げたシートに乗せていった。
「先輩、濡れてないですよ」俺はだれのかわからないパンツや、シャツを出しながらうれしそうに言った。
そして最後の荷物を出した。ドボドボに濡れて、膨れあがってなかなか出せない。ソノダと二人がかりで引っ張ってやっと引っこ抜いたものは…なんと、なんと俺のシュラフ(寝袋)と着替えだった。 俺のシュラフ(寝袋)と着替えが、長い筒状の防水バックの詰め栓の役割をして、ほかの人の装備は濡れなかった。
「ハハハハハハハ…信じられへん」笑うしかなかった。
「ハシモト…偉い、名誉の犠牲や」大先輩のその一言で、みんな笑った。俺も笑った。
俺のパンツが…俺のシャツが、俺の服が…。
その夜、シュラフなしでテントで寝ることになってしまった。着替えもない。震える体をどうしようもなかった。テントの中で俺の両側の先輩がシュラフに入ったまま、グッと俺を挟んだくれた。幾らか、暖かみを感じた。男同士くっつくのは…サイテーだったが、この際、いろいろ言っていられなかった。
結局、朝まで一睡もできなかった。
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休憩が終わり、次の瀬に向かうべく、ボートを出した。
幾つかの瀬を越え、俺たち1年生は自信というほどのことではないのだが、多少なりとも手ごたえのようなものを持つことができた。
さて時間はたち、次の瀬が迫ってくる。このあたりからは次々と迫力ある瀬が続いていくことになる。小歩危の駅のあたりを越えると、大先輩が言った。
「一発目は真ん中にデ〜ンと岩があるんや、右から入るど!」
「はぁ〜い」と俺たちが大声で返事をする。
「細いとこやど、真っすぐボートを入れんと、お釈迦しね」大先輩は続けた。
そして、すぐに迫ってきたのが二段の瀬、おっと本当にど真ん中あたりにでっかい岩、そして右側はどでかい岩の壁、その間のボート1艇半ぐらいのコース…まずいで、これは。
「漕げ!!」大先輩の号令とともに、一斉に全力で漕ぎ、舵を切る。コースに対してまっすぐに入れるかどうか、入れば、そのまま行けそうだ。
ボートは流れの右側にグッと寄った。流れに真っすぐにするため、大先輩一気にバックをかける。グッっとボートの先は瀬の中心に向いた。

「いくでぇ〜!」大先輩の号令に
「オ〜!」と、慣れてきた俺たちは、スリルを楽しむように突っ込んで行った。
「オッ〜オオオォォォ」自然にわき出る大声、真っ逆さまに落ちていくボート、先が着水し、その反動のショックがすさまじかった。後ろの大先輩と俺は、生き物のように跳ねるボートに振り飛ばされそうになりながら、片足だけ突っ込んだストッパーのおかげで何とかしのいだ。
「バッシャ〜ン…」ボート全体が、滝に落ちた。その瞬間、ボートは左に大きく振られた。左バックの俺は水面にどっぷり浸かり、ボートの右側が浮いている。
「あかん…いかれる…」そう思った。体の全体重をボートの内側に、大先輩はそっくりかえって全体重を外側にかけた。浮き上がった右側がグラグラッ…グラと振られながら、「バッシャ〜ン」と無事着水、転覆は免れた。ホッとした瞬間、大変なものを見てしまった。
「アアアアッ…防水バッグが…」俺の大声で全員が俺を振り返った。俺が流れていくバッグの方に視線を向けると
みんながバッグを見ながら声が出ない。
「あほッ、そんなことより漕げ、巻き込まれるやんけ」大先輩の号令に、ハッと目が覚めた。ボートを出さなければ、岩の影にできた渦にのまれてしまう…漕いだ。またまた全力で漕いだ。
やっと、瀬を越え、防水バッグを追う
「ヨッセ、ヨッセ、ヨッセ、ヨッセ、ヨッセ…」かけ声とともに防水バッグ目がけてボートを走らす。…走るなんて格好いい、ヨットみたいな表現だが、どれだけしんどいか、あんな水の抵抗のお化けのようなものを4人で漕いで、前に出すこと自体に無理があるんだ。だが、漕いだ。あの防水バッグの中には全員のシュラフ、着替えなどが入っている。もし、取れなければ…この格好で京都まで帰らなければならないからだ。
やっと防水バッグに追いついた。するといきなり
「偉い、ソノダ偉い…ソノダ、ソノダ、ソノダ、ソノダ」他の3人のソノダコールに
いや〜な顔をしていたソノダも根負けしたのか、仕方なく川に飛び込んだ。
ソノダは、ガンガン泳いで、バックを確保、そのまま岸に上がった。我々もボートを岸につけようとしたが、結構、流されてしまって、ソノダの位置から30メートルほど下流で岸についた。
ソノダの様子がおかしい…やたら重そうに防水バックを担いでいる。怪力なんだぞ、ソノダは…もしや…嫌な予感がした。
ソノダが、来た。
「バッグ、破れとるがな〜」
「ウッソ〜」大先輩を目をまん丸にして言った。
「ほれ、ここだがな」ソノダが、破れているところを見せた。
見ると、バッグのけつの部分がパックリ口を開けていた。
「中身出せ…」大先輩の指示に俺がバックの口を開き、中身を1つずつ出してソノダが広げたシートに乗せていった。
「先輩、濡れてないですよ」俺はだれのかわからないパンツや、シャツを出しながらうれしそうに言った。
そして最後の荷物を出した。ドボドボに濡れて、膨れあがってなかなか出せない。ソノダと二人がかりで引っ張ってやっと引っこ抜いたものは…なんと、なんと俺のシュラフ(寝袋)と着替えだった。 俺のシュラフ(寝袋)と着替えが、長い筒状の防水バックの詰め栓の役割をして、ほかの人の装備は濡れなかった。
「ハハハハハハハ…信じられへん」笑うしかなかった。
「ハシモト…偉い、名誉の犠牲や」大先輩のその一言で、みんな笑った。俺も笑った。
俺のパンツが…俺のシャツが、俺の服が…。
その夜、シュラフなしでテントで寝ることになってしまった。着替えもない。震える体をどうしようもなかった。テントの中で俺の両側の先輩がシュラフに入ったまま、グッと俺を挟んだくれた。幾らか、暖かみを感じた。男同士くっつくのは…サイテーだったが、この際、いろいろ言っていられなかった。
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