ああ、もう10センチ身長があったらと悲しむ男
汗…なるほど
夏休み…いい感じ!
夏期講習…おいおい、きつくなっていくね、それ。
甲子園…青春だ、青春!
かき氷…うんうん!
海…なるほど、いい感じだ。
女性の水着姿…そうそう、その発想、その方向ね!!
夏…
「お前、いやに肌出してないか?」と言う父
「だってぇ〜みんなこういう格好するんだもん、しなきゃ〜恥ずかしいじゃんねぇ〜」という小娘
「お前…ちょっと派手じゃないか?」と言う夫
「何言っているのよ、あなた、周りを見てよ、ほら、あそこの奥さんなんか、わたしより十も上なのに…ね、今はこれが当たり前なのよ」という奥さん
夏…それは、女性が暴力的とも言えるほど、自ら肌を露出する魔の季節なのである。
ある夏の満員の通勤電車の中のことだった。
ある青年、そう青年だよ、おやじなんかじゃない。まだ26歳だった。いや、26歳だったそうだ…。
いつものように満員の乗客の圧力のままに、のらりくらりと揺れながら列車に乗り、隣のおっさんが器用に新聞を小さく折って読んでいるのを横から一緒に読んでいた。
列車が駅についた。開く側のドアの正面近くにいた青年は、ドアが開いたときに備え、セカンドバッグを胸の前で抱きかかえるように持ち、心持ち身構えた。ドアが開いた。ホームで乗車の順番を待っている人たちが、列車から降りてくる人のために、一瞬待った。しかし、この駅にはだれも降りてこないとわかるや、一気に突入してきた。きっと彼らも突入したくて突入しているわけではなく、後ろからの圧力のままに突っ込んでくるだけなのだろう。
まず数人の中年サラリーマンたちが、青年の方に一気に突入してきた、青年にぶつかりながら左右に散り、奥へ奥へと進んでいった。そして左右にスペースがなくなったとき、ドアから乗り込もうとする圧力に押されて、一人の若い女性が青年の真正面にドスンとぶつかるように乗り込んできた。青年の目の位置に彼女の額が来た。「す、すみません…。」青年が女性の方を見ると、すまなそうに青年に目で会釈した。青年も、精一杯の爽やかな笑顔で「いいえ、いいんですよ」と答えた。
しかし、さらに彼女の後ろからの圧力は強くなり、まさにぎゅうぎゅう詰めになってしまった。
そして列車が動き出したとき「いッ痛い…」小さな声が聞こえた。彼女の胸が青年のセカンドバッグの金具に当たっているようだった。彼女は運悪く、両腕が下に下がったままで上げることすらできないでいた。体の向きを変えようとする彼女…しかし、その動作は余計彼女の胸に金具を食い込ませることになっていった。
列車が揺れるほどに、バッグと彼女の胸が摩擦し、彼女の肩ひものないタンクトップは、ジリジリと下がりだしてしまった。何とかしてあげたい…青年は苦悩した。このバッグを無理やり下にさげようか…しかし、そうすると彼女の胸がもろに青年にくっついてしまう。下手をして腕に当たったりしたら…ち・か・ん?
青年の苦悩の間にも、彼女のタンクトップはジリジリと下がり、ついに…ブ、ブラ…黒いブ…ラが、青年の視界に。彼は意を決した。周りのおやじたちの視線も、かなり感じた。新聞を読んでいるふりをしながら、チラチラと見ているおやじ、じっと遠くから一点を凝視しているおやじ、中づり広告を見ているふりをしながら、目玉だけ下を向いているおやじ…顔ひとつ動かさない、目玉だけの激しい攻防が繰り広げられていた。
青年は、意を決した。列車が揺れた瞬間、全身の力を振り絞って、後ろに体を押しつけ、彼女との距離を確保、次の瞬間、バッグを右手だけに持ちかえて下に降ろし、さらに左腕を自分の腹部を巻くようにした。
彼女もその瞬間を見逃さなかった。自分のバッグを抱えるように、彼女は胸を防御した。さらに彼女は列車の揺れ戻しが来たとき、青年と正面を向いていた体を斜めにしながら、青年の胸に肩と肘を押しつけた。「痛てえ…」今度は青年の胸が痛くなった。でも、これでち・か・んのえん罪は免れることになった寂しい?青年は、少しほっとした。そして、次の瞬間、聞こえないため息と同時に、目玉だけの闘いも終わった。
そこらここらから漂う、あのポマードの臭いをすべて払拭してしまう彼女のいい香り…青年は、ふと目を閉じて、あらぬ妄想の世界に入りたくなった。
グラッと列車が揺れ、よろけながら妄想の世界から引きずり出された青年は、ハッと体勢を直した。「おっと、危なかった…恥かくところだった」青年は、満員電車で妄想の世界に入った自分を恥じた。
ふと、下の方を見ると…ブ…ブラが、黒いブラがさっきより鮮明に、さっきより上から…見えてしまっていた。安心してしまった彼女は、青年に対し全く警戒心を持っていなかった。「敵は前方にあり」彼女の意識は、斜め上からの青年の視線には無防備だった。
「いけない、まずいよ…これ」と思いつつ、列車の揺れのたびに、彼女のブラが見えた。そしてブラからはみ出る、はみ○○が見えるかもしれない。列車がまた揺れた…ひょっとして、青年はチラッと見た。あ…あああ〜なんということだ。身長が足りない。あと10センチあれば、はみ○○が見えたのに…。そのとき青年の頭脳は、ポマード・バーコードおやじだった。
列車のドアが開いた。彼女は、青年の方を向いて、会釈して降りていった。彼女は…青年が全力で自分を守ってくれたと思ってくれたのだ。その彼女のはみ○○を見たいなどと…なんという恥知らずの青年だろう、ポマードどころか…ゾウリムシだった。
夏だ、夏が悪いのだ。そして暴力的な女性の肌の露出…青年は、一瞬悪魔に魂を奪われたのだった。
その後、青年は、立ち直ることができず、現在、世の中に対して恥知らずの、はみ○○などという言葉を書くような大人になってしまったという…
だが、青年本人は、20年もたつこの事件を忘れず、「いい思い出」と思っているところが、非常に興味深く、また悲しい現実でもあるのだった。
下のバナーをクリックしてください。









