■分解大好き人間
いとこのトシが、またいいおもちゃを買ってもらった。うらやましかった。
小学校の2年生ぐらいのときだった、トシはまだ幼稚園のかわいい頃だった。今では知らない人は、よけて通るようなちょっとこわいおっさんだ。
トシのおやじさんと、うちのおやじが兄弟、うちのおやじが兄さんだ。
俺がおふくろやおやじにねだって、ちっちゃい消防車のブーブーおもちゃを買ってもらった。すると、2〜3日して、もっとでっかいブーブーの消防車をトシは持っていた。いつもそうだった。必ず、俺よりいいものをトシは後から買ってもらう。
この年齢になってくると、親の気持ちというものも理解でき「な〜るほど」などと思うのだが、ガキの頃は、ただうらやましかった。
俺とトシは仲がよかった。
実は、仲良しというよりは、俺が一方的に引きずり回していただけなのだ。
「トシ、○○へ行くぞ!」と一声かけると、トシは一人っ子、遊ぶ相手もいなかったようで、俺の後に金魚のフンのようにくっついてきた。
そしてお互いのおもちゃで一緒に遊ぶ、「ブーン、ブーン…」かわいいもんだ。いろんなことが頭の中に浮かんできて、○○ごっこが始まる。
「△○×消防隊出動…う〜う〜、う〜う〜」なんてやっていたわけだ。
ところが、俺の悪いところは、そんな遊びはすぐに飽きてしまうところだった。
だんだん過激になっていく。突然、消防車がサンダーバードのジェットモグラのごとく、地中にもぐりだす。
「ファイアーモグラ発進…」なんて言いながら、砂場の山の中に消防車をぐりぐりもぐらせてしまう。
するとトシの頭の中は「!!!!」
つまり奴はそれが「おもしろい!!」と思ってしまうのだ。
奴が、いい年して今でも、酒を飲んで俺とくだらない話をして大騒ぎできるのは、こんなことを「おもしろい」と思ってしまう、俺と同等か、それ以上に低俗なところが原因だ。
トシは目をキラキラ輝かせて「俺も…」と、自分の上等なブーブー消防車をがんがん砂場に突っ込む、もう完全にジェットもぐらにしてしまうのだ。
おっと、そこまで俺についてくるとは大した奴だ。ならば…俺はいきなり消防車が空を飛ぶことにしてしまう。
「ロケットエンジン点火…ぼう〜ん、ピィーン」、砂だらけの消防車を持ち上げて、びゅんと投げてしまう。ガサガサ…と砂の上に無惨に落っこちる消防車…。
それを見たトシは、またまた目をキラキラと輝かせて、
「俺も…」と力いっぱい、上等な消防車をぶん投げるのだ。
かくして…二人の消防車は、ボコボコになってしまった。
さて、次に始まるのは、お決まりの「修理」という儀式だった。
小学校の2年やそこらのガキが、そんなもの直せるはずはないのだが、俺は「修理」だと信じていた。「ジャジャ〜ん」と、家からドライバーを持ち出してくる。
昔のブリキのおもちゃは、マイナスのドライバー1本で簡単に分解できてしまった。今のように接着剤で固めることもなく、ブリキを折り曲げたり、タッピンねじで一つずつ丁寧に組み立てられていたからだ。
まず、自分の消防車をばらす。ネジをはずし、折りまげてある止めを延ばし、台車と上の部分が外れた。
「オ〜オ〜…」二人の目は、キラキラと輝き出す。
「エンジンや…」消防車の心臓部が見えた。ただの弾み車なのだが、俺たちには立派な「エンジン」なのだ。
ジェットもぐらのおかげで、立派なエンジンは、砂まみれになり、動かそうとしてもガリガリ、ガリガリと前のようにスムーズに動かない。当たり前と言えば当たり前。
エンジンの洗浄が始まる。川に行き、ジャブジャブと鉄のエンジンを洗ってしまう。すると、ガリガリしていたエンジンが、また「ウィーン…」と回りだした。「やった!」修理成功やんけ。
「トシ、貸してみ、修理したるわ」と俺
「…うん」と不安げにも、威圧されて、しぶしぶ、上等の消防車を俺に手渡すトシ
「分解や!」、またまた目を輝かせて、分解に入る。
さすが、上等な消防車は大きく、ネジもたくさん、折り曲げの止めもたくさんあった。それにしっかりしていて、なかなか外れない。「う〜ん」と力を入れたとき…「メキッ」と音がした。折り曲げの止めを外そうと力任せにドライバーを突っ込んだら、すぐ近くの運転席のプラスチックの窓が割れた。
「あ〜あ…」トシの悲しい声が聞こえる。
「もうちょっとや、エンジン見えるでぇ」全然そんなこと気にしない俺
しばらく時間をかけてやっと、俺のよりずっと大きくて立派な「エンジン」が見えた。
「お〜デッカイやんけ」と感嘆する俺
「……」何も言わず、勝ち誇ったようにニコニコしているトシ
ジャブジャブ…川の水で、大きなエンジンも洗浄、そのかいあって、トシのエンジンも快調な音を立てて回った。
そしていつもそうなのだが、エンジンだけで遊びたくなってくる。今度は台車から後輪2つにつながっているエンジンの部分を台車から取り外し、エンジンの両側に車輪がついた状態で、がんがん走らせる。周りに何もついてないんだから、これ以上の軽量化はない。目を見張るような勢いで、不思議な動きで走り回る、エンジンと車輪2つだけの新しいおもちゃが誕生した。これは面白い!
「にいちゃん、俺もやりたい」トシが俺の新しいおもちゃであそびたがる。
「あかん、これ俺のんや、お前のあるやんけ」と結構冷たい俺
「にいちゃん、俺のもつくってや〜」とトシ
「ええよ」と結構優しくなる俺
俺が、トシのでかい消防車のエンジンを取り外している間に、トシは俺のおもちゃでご機嫌に遊んでいる。
やっと、外れたでかい車輪とエンジンだけのヘンテコなおもちゃが誕生した。試しに車輪を思いっきり回してみた。グゥイ〜ン、グゥイ〜ンと重厚感のある音、そしていつまでも周り続ける車輪、弾み車の大きさが全然違うのだから、当然と言えば当然。
「トシのかっこええやんけ!」と俺
もうニコニコ顔で見ているトシ
「にいちゃん、はよ貸してや」とトシ
そして、二人は暗くなるまで新型おもちゃであそび倒す、気がつくとあたりは暗く、おもちゃの部品も何もかももう見えない。
「帰ろか?」そう言って、トシを連れて家に帰る。
トシのかあちゃん「部品は?」
俺「…どっか行ってもた」
そして2日後、錆び錆びで回らなくなったエンジンが、おもちゃ箱の中にあった。
俺のおもちゃ箱に買ったまま残っているおもちゃはなかった。みんな部品と化していた。
そして、望んだのかどうか知らないが、トシのふたまわり大きいおもちゃ箱も部品しか入っていなかった。
トシのおやじさんが、生きていたときよく俺に言った。
「トシに何こうてやっても、みんなお前が壊したてもうて、まったく悪いやっちゃ」と
今日、またパソコンを分解してしまった。
ちょっと…ディスクの具合が…といいわけをしつつ…
そして、今日一日、仕事にならないハメになってしまった。
ちゃんと組み立てたつもりなのだが、立ち上げると
「パスワードは?」と聞いてくる。俺が「gengorou」と入れる。ウィンドウズが始動し…「設定を保存します」と再起動してしまう。そして「パスワードは?」と聞いてくる。俺がまた「gengorou」と入れる。「設定を保存します」と再起動して、また「パスワードは?」と聞いてくる…。
「なめやがって…」とつぶやく俺
パソコンは人をなめない。そんなことは知っている。だが、こいつは絶対俺をなめている。
朝8時から3時まで修復にかかってしまった。だが、パソコンはついに動いた。
俺の勝ちだ。
「愛機」という言葉がある。
俺の愛機は、買ったままの姿でいたものがない。
「かわいそ〜う」…そうかな?
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