「おもろいやんけ」にご訪問いただきありがとうございます。
本ブログは、以下に移行いたしましたので、よろしくお願いします。
   http://omoroi.eishin-net.com/
以後、新しい記事は、そちらに掲載させていただきます。


目 次
 本ブログは、通常のブログのように順を追って読むと、恐らく混乱し、わけのわからないことになってしまいます。
 すべての記事は、下の目次で整理されています。
目次でご興味のわいたところを探していただけると、少しは読みやすくなると思います。

   ■少年サッカー編 目次へ     ■中学部活サッカー編 目次へ
   ■サッカー番外編 目次へ     ■かまたりの回想編 目次へ
   ■かまたりブログ編 目次へ    ■かまたりのおすすめ編 目次へ
   ■かまたりのたわごと編 目次へ ■かまたりの妄想編 目次へ
   ■小中学生の勉強編 目次へ

 作者プロフィール
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

続きを読みたい方・おもしろかったと思っていただいた方は、
下のバナーをクリックしてください。
ninki

おもしろショップ「ユーイング」|-----|スポンサー広告||TOP↑

■夏を征しないもの

  夏が来た!

himawari_008.jpg

 塾の経営者兼教師という商売柄、夏と言えば夏期講習という悲しい発想になってしまうのだ。
しかし、受験生にとっては、やはり受験の天王山と言われる時期、こちらとしてもかなり気合いを入れて準備に入る。

ある年の夏期講習のこと
うちみたいなちっちゃな塾でも、一応ダイレクトメールを出し、塾外の生徒をお誘いしている。
その年、4人の生徒が塾外から来てくれた。
その中にトシハル君はいた。
塾生の紹介で来てくれたということだった。

講習初日・1時間目数学
 朝8時半、初めてこの塾に来た彼は、わざわざ俺のところまで来て、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
なるほど、育ちいいの子だと思った。
 変な話、こういう子を見ると、すぐ「その子のお母さん」が、頭に浮かぶから不思議なものだ。

さて、数学の授業の最初は、いつも基礎計算10問プリントをやる。benkyo_epa.jpg
誰が何といっても、数学の基礎は計算力、毎日毎日これをやってから、本日のテーマに入っていくわけだ。
プリントを配り「はい、はじめ~」とかけ声一つ、その後はみんなカリカリカリカリと計算を解いていく、俺はその間、生徒たちの間をぐるぐるまわりながら様子を見ていく。
新しく来てくれた子たちが、やはり気になるので、その4人の子たちを見てまわり、一人ずつわからないところ、ミスしているところを教えてあげていた。

そしてトシハル君のところに来たとき、彼は文字式のちょっとばかり手のこんだ問題に苦しんでいた。
俺は、彼の隣にどっかり座り
「ちょっと見せてみ」と手を出した。
トシハル君、いきなり教師に隣に座られて、かなりびっくりしたようで
「は、はい」と言いながら、自分のプリントを俺に渡した。

俺は、その解答を目で追った。
「…数学苦手か?」俺の声に
「はぁ…」と恥ずかしそうな半分ため息の返答が帰ってきた。
「ほな、この1問だけもう1回、始めからやってみ、俺、見てるから」と解かせてみた。
トシハル君、かなり緊張しているようで、汗をにじませながら、それでも懸命に問題に取り組んでいた。
途中まで来て、自分でも何か変だと感じながら解いているようだった。
「それ…おかしいやろ?」
「はぁ…」
「これはな、こうやって解くんや、ええか、よう見とれよ」と、いつものようにA4のコピー用紙を半分に切った紙に、1行ずつ順序を追って解いてみせる。
そして彼の解答と俺の解答のどこが違うのかを比べながら説明をしてあげた。
「ええか、このとおりやってみ、全く同じようにやるんやぞ」と、かなり強く言う
「はい」、そう言って彼は言われたように、俺の解答と同じ順序で次の問題を解きだした。
「これ…合ってますか?」彼は少々不安ぎみに俺に尋ねた。
「ヨッシャ、できた、その調子でやってみ」と言って俺はトシハルの隣の席を立った。
ほかの子たちも同じように、隣に座って、一緒に解きながら、教えていた。
それでも気になって、チラチラとトシハル君に目をやると、まじめに問題に取り組んでくれていた。

講習初日・2時間目英語
トシハル君、英語は好きなようで、俺が説明を終わると、どんどん問題を解いていった。
「ほう…英語は得意なんやな」と声をかけると
「数学が苦手なだけんです」と、ニコニコしながら少々挑戦的な答え
「そうか、そりゃえらい失礼しました」、こりゃ大丈夫だと、彼のそばを離れた。
彼は、周りの英語の苦手な生徒に質問されて、教えてあげていた。彼の英語ができるというのは、友達の間では周知の事実のようだった。

講習初日・3時間目理科
トシハル君が俺の机のところに来た。
「先生…」
「ん~どうした?」と俺
「すみません、家の用事があって、親が迎えに来ているんです。理科は休ませてください」
「おお、そうか、残念やな…まあ、しようがないわな、わかった」
彼は、いやに大きな鞄を肩にかけて帰っていった。

講習2日目・1時間目数学
トシハル君、言われたとおり、まじめに宿題の計算をやってきた。ところが、合うのは昨日教えた類の問題だけ…困ったもんだ。
そしてまた、隣に座って
「ほな、今日はこの手の問題をやろか」
「はい」と爽やかな返事
こういう爽やかな青年というのは、何が原因であんなに爽やかなのかね~
この爽やかという言葉に無縁のような俺から見ると、本当にうらやましかった。
例えば、彼のような爽やか系が笑うと「爽やかな笑顔」になり、俺らのようなものが笑うと「にやけてる」になる。なんで…?

講習2日目・2時間目英語
トシハル君、どんどん知名度アップ、なかなかいい感じ

講習初日・3時間目理科
やっぱり家の用事で帰ることになってしまう…。

そして3日目、俺は彼に聞いた。
「トシハル君よ、用事って何や、お金もったいないやろ」と
「すみません…」
「いやいや、悪いとか、何とかやなくてな、心配やからな」
「……」
「出られへんねやったら、お金返そうか?」
「…あの~実は、ほかの塾で」
「あああ、そうか、ダブってんのか」
「はい、講習の時間がぶつかるときがあって…それで、すみません」
「いやいや、それやったら、それでええんやけどな…どこ行ってんねん」

俺は驚いた。
午前中の講習がうち、若干ダブりながら夕方までのほかの塾の講習が一つ、そしてまた違う塾の夜の講習が一つ、合計三つの夏期講習に出ていたということだった。

「そりゃ~しんどいやろ」
「はい」
「でも、それ無理ちゃうか~」
「は~、親が申し込んでしまって」
「ちょっとテキスト見せてみ」俺は、そう言って、渋々彼が出した教材をペラペラめくって中を見た。
どのページも中途半端にしか取り組んでいない跡がはっきり出ていた。
疲れて眠かったのか、途中から意味不明のミミズのような文字になっていたりもしていた。

20050724_1.jpg

彼は、母親が申し込んだ三つの講習に「出るだけ」で精いっぱいだった。

次の日、俺は彼に言った。
「トシハル君よ、これじゃ何も残らんぞ」
「はぁ…」
「じゃあな、ここでは英語の時間も、理科の出られるときもずっと数学で通すか」
「えっ…でも、いいんですか」
「お前も、その方がええんやろ」
「はい、数学で少しできるようになったんで…その方が」
「よっしゃ、それでいこう!」

以来、彼は英語の授業や理科の授業のときには、自分で後ろに席に移り、みんなより遅れている数学に取り組んだ。
俺も授業の合間を見ては、彼の横に座り、ノート1ページに1問しか解かない、カード式の勉強方法を教えた。

1問ずつ説明し、理解させ、ノートに解かせて、それを別のノート1頁にもう1度清書のように解かせる。
俺が解いたのを見ながら1回、自分で解いて1回、清書で1回、合計3回解かせた。
カメのようにゆっくり、でも確実に、夏休みにこれだけでも残してやりたかった。
そのカードで、夏期講習が終わってから勉強してほしかった。

そして最終日の授業が終わった。
トシハルは、この塾の入塾申込書をくれと言ってくれた。

夏休みが終わり
学校の実力テストの結果が帰ってきた。
塾生たちの成績をまとめながら、ふとトシハルのことが気になった。
「おい、トシはどうしとるんや」生徒たちに聞いた。
「トシね、親が反対して、ここにこれないだって、来たいって言ってたのにね」
「そうか…」少し寂しかった。

彼は、志望校に合格することができなかった。


もちろん、夏期講習だけが原因ではないだろう

うちの塾に来ていれば合格したなどと、マンガみたいなことを言うつもりも毛頭ない。

夏期講習を三つも受けたお母さんの気持ちも、同じ、子どもの親として痛いほどわかる。

そして、その三つの講習を辛くても、文句も言わずに通い続けたトシハルは、お母さんをうらんだりすることは決してないだろう。

何かが少しずれてしまったのかもしれない。

彼は、第一志望校ではない高校で元気にやっているという。

もちろん、誰もが第一志望校に合格できるわけではない。

これでよかったんだ。

しかし、俺の中に消えないさみしいが残っている。

夏を征しないもの…


続きを読みたい方・おもしろかったと思っていただいた方は、
下のバナーをクリックしてください。
ninki

おもしろショップ「ユーイング」|07-21|勉強編コメント(0)TOP↑
この記事にコメント
名前:
コメントタイトル:
メールアドレス:
URL:
コメント:

パスワード:
管理人だけに表示:
管理者にだけ表示を許可
この記事にトラックバック

お気に入りに追加

★新 着★

プロフィール

おもろいやんけが本に!

「おもろいやんけ」が、今すぐ全部読める電子本になりました。どうかよろしくお願いします。

おもろいやんけ 第2段
「中学部活編」発売!

bukatu_hyoshi100_100.jpg

おもろいやんけ 第1段
「少年サッカー編」好評発売中!

おもろいやんけ少年サッカー編表紙


QRコード

QRコード

ブロとも申請フォーム

配信

最近のコメント

最近のトラックバック

リンク

RSSフィード

RSS
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。