■第13話 第2試合 対 岡島西中
次の試合は 対 岡島西部中学
岡島中のある地域は、かなりサッカーの盛んな土地柄だ。少年サッカーのチームも多く、その子たちがそのまま中学の部活に入っているため、経験とテクニックでは勝てないことはわかっていた。さらに、我がチームはさっき上島中学と試合をしたばかり、休憩は5分間しかなかった。「きついな…」
…第2試合開始…
あっという間に、攻め立てられる。外へボールを出して、逃げるのがやっとのパターン。
しかし、守っても守っても敵は攻めてくるわけで、こちらが攻めに行かない限り、守りは続く…これが我がチームの今までの最も悪いパターン、このままずるずる得点されて負けてしまう。
思ったとおり、あっと言う間に2点取られてしまった。
だれが悪いということではないのだが、守るだけだとどうしても限界がある。
…ハーフタイム…
顧問の先生が何かいろいろ指示をした後、おやじコーチの勝手な出番
「2点はしょうがない、言ったことを思い出せ、きょうは負けてもええんや。形をつくれ、自分たちの形をつくれば必ず得点のチャンスは来るはずや。ただ守っていても一生勝てへん」
個々に指示を与えた。
「ナオト! 自分で動くことばかり考えず、チームを使え」
「谷川! お前なかなかええぞ、その調子で体で当たっていけ、こわがったらあかん」
「文沢! お前…足をちょこちょこ出すな、そこをすくわれて抜かれている。体でいけ、体で…」
「三沢! お前のスローインはナオトに頼りすぎ、ナオトをおとりにして、あいたスペースに走らせて、そこへ投げ込め…」
…5分のハーフタイムは、あっという間に終わってしまった。
…後半開始…
後半開始すぐ、またもや劣勢な試合。
しかし、さっき俺にどなられた右バック、文沢のところでボールが取れた。文沢、必死で縦にパスを出す。
…「弱い!」顧問の先生の声が飛ぶ
ところが、そこへセンターハーフのヤマがフォローに入ってくれた。弱すぎたパスを途中でタッチ、そのままゴール前にポーンとパスが出た。
ボールに一直線に向かったのは、春に入部したての3年生フォワードのマサ、懸命に走る、走ることしかできないマサ、全力で走る。
「行け〜」と周りから声が飛ぶ
しかし、マサさすがに足は速い。戻る敵のバックの1人を追い抜いた。それに気づいて、フォローに入る相手のディフェンスをも抜き去り、ボールに向かってただ一直線に走る。
相手キーパーが前に飛び出す。
「打て〜シュート、シュート」後ろの仲間たちから声がする
マサ、突撃!
キーパーより一瞬早くシュート
しかし、慌てたマサのシュートはスカッた。勢いもなくボールは、ころころ転がっていく。相手キーパーが振り返ってボールに飛びかかる。
全員の視線が一点に注がれる。息をのむ俺たち
…キーパーの手は、届かなかった!
ボールはゴール隅に…転がり込んだ。
「おぉぉぉっ」と俺と先生が思わず顔を見合わせた。
俺は、驚嘆した。かつて、こんなことはなかった。ずるずると負けていくチームだったのに…。
もう、俺も先生もいけいけムード
「いけー、そのままいってまえー」意味不明のコーチの指示?
先生「それでいいんです、それでいいんです」とあくまで丁寧な指示
相手のゴールキックを、日本語がわからないブラジル二世のジエク君、強力なヘッディングというか、どう見ても頭突きなのだが、ガーンと一気にボールは敵のバックの位置へ、これで距離は挽回、そこへ「突っ込め…」の指示どおり、「うわー」となだれ込む。
なんだか…ラグビーの様相を呈してきた。だれが蹴っているのか、ボールはどこなのか、砂煙でよくわからない。
突然、視界に入ったボールは、相手ゴールへ向かって飛んでいた。ゆっくりしたスピードで…「入っちまえ」思いっきり念じた。
世の中、そんなに甘くはない。相手キーパーがそれに気づき、振り向いてジャンプ…キャッチしてしまった。「ちくしょう!」取られた。
だが、キーパーが、ボールを持ったまま着地したのはゴールの内側だった。
「入った、入った」という一中イレブンの大抗議に対し、審判「ゴール」のコール。
やった2点目。
やった、同点だ、同点だ、俄然意気が上がる。
でも、さすがに彼らに疲れが出ていた。ボールを追ってはいるものの、足がもつれだしている。キックしたボールがまともに飛ばない。自分のイメージと体の動きにずれが出てきている。疲れている証拠だった。
「あと1点だ、気力では負けるな!」鬼コーチの声は飛ぶ
…「オーッ」と帰ってくるかけ声に、もう力はない。
頼む、あと2分、もってくれ…
…ホイッスルが鳴った…試合終了…
2対2 引き分け
練習試合とはいえ、負けなかったのは初めてだった。
「公式戦1勝」を目指す我がチームにとって、これは大きな自信となった。
公式戦まで、あと27日…
<中学部活編>
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次の試合は 対 岡島西部中学
岡島中のある地域は、かなりサッカーの盛んな土地柄だ。少年サッカーのチームも多く、その子たちがそのまま中学の部活に入っているため、経験とテクニックでは勝てないことはわかっていた。さらに、我がチームはさっき上島中学と試合をしたばかり、休憩は5分間しかなかった。「きついな…」
…第2試合開始…
あっという間に、攻め立てられる。外へボールを出して、逃げるのがやっとのパターン。
しかし、守っても守っても敵は攻めてくるわけで、こちらが攻めに行かない限り、守りは続く…これが我がチームの今までの最も悪いパターン、このままずるずる得点されて負けてしまう。
思ったとおり、あっと言う間に2点取られてしまった。
だれが悪いということではないのだが、守るだけだとどうしても限界がある。
…ハーフタイム…
顧問の先生が何かいろいろ指示をした後、おやじコーチの勝手な出番
「2点はしょうがない、言ったことを思い出せ、きょうは負けてもええんや。形をつくれ、自分たちの形をつくれば必ず得点のチャンスは来るはずや。ただ守っていても一生勝てへん」
個々に指示を与えた。
「ナオト! 自分で動くことばかり考えず、チームを使え」
「谷川! お前なかなかええぞ、その調子で体で当たっていけ、こわがったらあかん」
「文沢! お前…足をちょこちょこ出すな、そこをすくわれて抜かれている。体でいけ、体で…」
「三沢! お前のスローインはナオトに頼りすぎ、ナオトをおとりにして、あいたスペースに走らせて、そこへ投げ込め…」
…5分のハーフタイムは、あっという間に終わってしまった。
…後半開始…
後半開始すぐ、またもや劣勢な試合。
しかし、さっき俺にどなられた右バック、文沢のところでボールが取れた。文沢、必死で縦にパスを出す。
…「弱い!」顧問の先生の声が飛ぶ
ところが、そこへセンターハーフのヤマがフォローに入ってくれた。弱すぎたパスを途中でタッチ、そのままゴール前にポーンとパスが出た。
ボールに一直線に向かったのは、春に入部したての3年生フォワードのマサ、懸命に走る、走ることしかできないマサ、全力で走る。
「行け〜」と周りから声が飛ぶ
しかし、マサさすがに足は速い。戻る敵のバックの1人を追い抜いた。それに気づいて、フォローに入る相手のディフェンスをも抜き去り、ボールに向かってただ一直線に走る。
相手キーパーが前に飛び出す。
「打て〜シュート、シュート」後ろの仲間たちから声がする
マサ、突撃!
キーパーより一瞬早くシュート
しかし、慌てたマサのシュートはスカッた。勢いもなくボールは、ころころ転がっていく。相手キーパーが振り返ってボールに飛びかかる。
全員の視線が一点に注がれる。息をのむ俺たち
…キーパーの手は、届かなかった!
ボールはゴール隅に…転がり込んだ。
「おぉぉぉっ」と俺と先生が思わず顔を見合わせた。
俺は、驚嘆した。かつて、こんなことはなかった。ずるずると負けていくチームだったのに…。
もう、俺も先生もいけいけムード
「いけー、そのままいってまえー」意味不明のコーチの指示?
先生「それでいいんです、それでいいんです」とあくまで丁寧な指示
相手のゴールキックを、日本語がわからないブラジル二世のジエク君、強力なヘッディングというか、どう見ても頭突きなのだが、ガーンと一気にボールは敵のバックの位置へ、これで距離は挽回、そこへ「突っ込め…」の指示どおり、「うわー」となだれ込む。
なんだか…ラグビーの様相を呈してきた。だれが蹴っているのか、ボールはどこなのか、砂煙でよくわからない。
突然、視界に入ったボールは、相手ゴールへ向かって飛んでいた。ゆっくりしたスピードで…「入っちまえ」思いっきり念じた。
世の中、そんなに甘くはない。相手キーパーがそれに気づき、振り向いてジャンプ…キャッチしてしまった。「ちくしょう!」取られた。
だが、キーパーが、ボールを持ったまま着地したのはゴールの内側だった。
「入った、入った」という一中イレブンの大抗議に対し、審判「ゴール」のコール。
やった2点目。
やった、同点だ、同点だ、俄然意気が上がる。
でも、さすがに彼らに疲れが出ていた。ボールを追ってはいるものの、足がもつれだしている。キックしたボールがまともに飛ばない。自分のイメージと体の動きにずれが出てきている。疲れている証拠だった。
「あと1点だ、気力では負けるな!」鬼コーチの声は飛ぶ
…「オーッ」と帰ってくるかけ声に、もう力はない。
頼む、あと2分、もってくれ…
…ホイッスルが鳴った…試合終了…
2対2 引き分け
練習試合とはいえ、負けなかったのは初めてだった。
「公式戦1勝」を目指す我がチームにとって、これは大きな自信となった。
公式戦まで、あと27日…
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