■第15話 「形をつくれ」
大会が近くなると、それなりに同レベル同士の練習試合が組まれる。前回に引き続き、今回は2回目の練習試合となった。
1試合目… 対 田原中学校
相手はうちと同レベルの弱い弱い、もうひとつ弱い田原中学校
我が部員達…勝てると思ったのか、何かおかしい。
動きが緩慢、表情がにやけている。真剣さが足りない。押しているのに、得点できない。
顧問の先生と教育実習生の先生が、指示を出す。
俺は、二人の先生たちの手前、今日は、黙っていようと思っていた。
しかし、試合を見ていて「どうも、まずいな」と思った途端、うまくもないドリブルにスルスル抜かれる。
ひょろひょろっとしたセンタリングが上げられる。
「あ〜あ」と思っていると、下手くそなシュートされた。
楽に取れると思ったボールを、これまた気の抜けたキーパー吉田が前に弾いてしまった。
「ばかが、後ろに出せばいいものを」…
こぼれたところに、ディフェンスがマークを外され、豪快に蹴り込まれて1点取られてしまった。
その後、何とか1点返すも、またまたばかみたいな失点をして
…1対2…
負けちまった…それも、こんな情けない負け方で…
2試合目… 対 富士中央中学校
これで負けたら、公式戦はめちゃくちゃになる…
子供たちは正直だ。滅多に練習に出て来ない顧問の言うことなんか、真剣に聞くはずがない。
こいつらのことを何も知らないセンコウが、偉そうにいきなりいつもと違う作戦なんか与えるから、動けないんだ。ばかたれが!
もう我慢できない。俺は、キレちまった。
センコウの作戦の指示の後で…頼まれもしないのに…すっと前に出た。
「お前ら、気合い入れんかい、なんで〜さっきの試合は」と大声で怒鳴った。
にやけた生徒たちの表情が一瞬で引きつる。
「勝ちたくないのかよ…えー!」周りがシーンとしてしまう。
「帰れ、もうやめとけ、こんな試合しても意味ないわ」と怒鳴り散らす
センセイ「まあまあハシモトさん」の言葉を完全に無視しながら…
「絶対2敗するな…」
「けんかやと思え、やられる前にやっちまえ、やられたらやりかえせ、1対1で絶対負けるな…わかったか!…返事は」…
「オー」…声が小さい
「オー」…まだまだ、気合い入れろ
「オーッ!!」とやっと全員のでかい声が出たところで…円陣を組ませた。
さらにかけ声を出させて試合に出した。
完全にキレた俺にセンコウ何も言えず…
試合開始から、動きが1試合目とぐっと変わった。
これが中学生の不思議なところだ。
サッカー部のおじさんのこれからが本領発揮
とにかくでかい声を出した。
一人ひとりの子供に具体的な指示を
「ナオト、三沢と平行に走っれ」
「鬼頭、そこで競れ、飛べ!」
「当たれ文沢、体ごとぶつかれ…」
「谷川!中盤までにプレッシャーかけろ」
具体的な指示は少しずつ奴らに浸透していく…
奴らはいきなり敵にプレッシャーをかけはじめた。
おかげで、相手は慌てたのか、ゴール前で、なんとハンドの反則
PKをもらう
…蹴るのは、キャプテン、ナオト。
6年もこいつのサッカーを見てきて、PKを蹴る姿を見るは初めてだ。
不思議なことに、鼓動がどんどん大きくなる。
自分がPKを蹴るような錯覚を起こしているみたいだった。
周りの声なんか聞こえなくなってくる。
苦し紛れに「ナオト、イケーェ」と怒鳴る。
冷静に彼は決めてくれた。
先制の1点をゲット!
その後、相手に対するプレッシャーはどんどん強くなり、汗と砂だらけになった顔の目が輝き出した。
「いい顔になってきた…これなら勝てる!」かもしれない。
格好がついてきたところで、若手青年コーチが教えてくれたポストプレーを使ってみようと思った。
「ヤマ! 谷川とナオト、三沢の3人でポストプレーをやらせろ」の俺の声に…端っこでおとなしくしていた若手青年コーチが、俺の方を見て、ニヤっとしながら前に出た。
青年コーチが、動き出した。
「ヤマにボールを集めろ…」青年コーチの指示が出る。
体の一番小さいヤマが、センターライン付近でボールを確保、
「タニだ」の青年コーチの声に
ヤマ、頑張ってキープしながら、サイドの谷川にパス。
谷川、ドリブルをしながら前進して、再びヤマに返し、逆サイドの三沢にボールをつなげようとするが、そんなに甘くはいかない。
敵にカットされた。
そこへナオトが体当たり、まんまと横取り
ナオト「走れっ!」とマサに声をかけながら、スペースに縦パス一本
マサ、ボールめがけて猛ダッシュ、だが、パスが長すぎたか?
マサ一直線に走る、走る…なんとぎりぎりのところでボールに追いついてしまった。
こいつの足は本物だ
相手ディフェンスが、マサに体をぶつけてくる。
マサの後ろについて走ってきた、ヤマが「戻せ」とマサに
「抜け!」とタニ
しかし、4月に入ったばかりのマサにフェイクやバックパスなんて、そんなややこしいことなんかできない。
奴はもらったボールはどんなときもシュートのみ…「打てぇ〜」
何度もシュートをスカっていた、マサ、しかし思い切り振り抜く…
地をはうような、鋭いシュート…
キーパー、足を出してとめようとするが、届かず、ボールはゴール左に突き刺さった。
「ひょっして、こいつ…才能あるかもしれない」
ベンチが沸いた…こんなにきれいに点が取れたのは初めてだった。
初めて形ができた。
選手たちの真っ黒な顔に笑顔が戻った。にやついた顔ではなく、笑顔だった。
結局4対1で勝った。これでやっと2勝目。
真剣さを取り戻した2試合目
彼らはサッカーを楽しんでいた。よかった。こうじゃないと、おもしろくない。
<中学部活編>
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大会が近くなると、それなりに同レベル同士の練習試合が組まれる。前回に引き続き、今回は2回目の練習試合となった。
1試合目… 対 田原中学校
相手はうちと同レベルの弱い弱い、もうひとつ弱い田原中学校
我が部員達…勝てると思ったのか、何かおかしい。
動きが緩慢、表情がにやけている。真剣さが足りない。押しているのに、得点できない。
顧問の先生と教育実習生の先生が、指示を出す。
俺は、二人の先生たちの手前、今日は、黙っていようと思っていた。
しかし、試合を見ていて「どうも、まずいな」と思った途端、うまくもないドリブルにスルスル抜かれる。
ひょろひょろっとしたセンタリングが上げられる。
「あ〜あ」と思っていると、下手くそなシュートされた。
楽に取れると思ったボールを、これまた気の抜けたキーパー吉田が前に弾いてしまった。
「ばかが、後ろに出せばいいものを」…
こぼれたところに、ディフェンスがマークを外され、豪快に蹴り込まれて1点取られてしまった。
その後、何とか1点返すも、またまたばかみたいな失点をして
…1対2…
負けちまった…それも、こんな情けない負け方で…
2試合目… 対 富士中央中学校
これで負けたら、公式戦はめちゃくちゃになる…
子供たちは正直だ。滅多に練習に出て来ない顧問の言うことなんか、真剣に聞くはずがない。
こいつらのことを何も知らないセンコウが、偉そうにいきなりいつもと違う作戦なんか与えるから、動けないんだ。ばかたれが!
もう我慢できない。俺は、キレちまった。
センコウの作戦の指示の後で…頼まれもしないのに…すっと前に出た。
「お前ら、気合い入れんかい、なんで〜さっきの試合は」と大声で怒鳴った。
にやけた生徒たちの表情が一瞬で引きつる。
「勝ちたくないのかよ…えー!」周りがシーンとしてしまう。
「帰れ、もうやめとけ、こんな試合しても意味ないわ」と怒鳴り散らす
センセイ「まあまあハシモトさん」の言葉を完全に無視しながら…
「絶対2敗するな…」
「けんかやと思え、やられる前にやっちまえ、やられたらやりかえせ、1対1で絶対負けるな…わかったか!…返事は」…
「オー」…声が小さい
「オー」…まだまだ、気合い入れろ
「オーッ!!」とやっと全員のでかい声が出たところで…円陣を組ませた。
さらにかけ声を出させて試合に出した。
完全にキレた俺にセンコウ何も言えず…
試合開始から、動きが1試合目とぐっと変わった。
これが中学生の不思議なところだ。
サッカー部のおじさんのこれからが本領発揮
とにかくでかい声を出した。
一人ひとりの子供に具体的な指示を
「ナオト、三沢と平行に走っれ」
「鬼頭、そこで競れ、飛べ!」
「当たれ文沢、体ごとぶつかれ…」
「谷川!中盤までにプレッシャーかけろ」
具体的な指示は少しずつ奴らに浸透していく…
奴らはいきなり敵にプレッシャーをかけはじめた。
おかげで、相手は慌てたのか、ゴール前で、なんとハンドの反則
PKをもらう
…蹴るのは、キャプテン、ナオト。
6年もこいつのサッカーを見てきて、PKを蹴る姿を見るは初めてだ。
不思議なことに、鼓動がどんどん大きくなる。
自分がPKを蹴るような錯覚を起こしているみたいだった。
周りの声なんか聞こえなくなってくる。
苦し紛れに「ナオト、イケーェ」と怒鳴る。
冷静に彼は決めてくれた。
先制の1点をゲット!
その後、相手に対するプレッシャーはどんどん強くなり、汗と砂だらけになった顔の目が輝き出した。
「いい顔になってきた…これなら勝てる!」かもしれない。
格好がついてきたところで、若手青年コーチが教えてくれたポストプレーを使ってみようと思った。
「ヤマ! 谷川とナオト、三沢の3人でポストプレーをやらせろ」の俺の声に…端っこでおとなしくしていた若手青年コーチが、俺の方を見て、ニヤっとしながら前に出た。
青年コーチが、動き出した。
「ヤマにボールを集めろ…」青年コーチの指示が出る。
体の一番小さいヤマが、センターライン付近でボールを確保、
「タニだ」の青年コーチの声に
ヤマ、頑張ってキープしながら、サイドの谷川にパス。
谷川、ドリブルをしながら前進して、再びヤマに返し、逆サイドの三沢にボールをつなげようとするが、そんなに甘くはいかない。
敵にカットされた。
そこへナオトが体当たり、まんまと横取り
ナオト「走れっ!」とマサに声をかけながら、スペースに縦パス一本
マサ、ボールめがけて猛ダッシュ、だが、パスが長すぎたか?
マサ一直線に走る、走る…なんとぎりぎりのところでボールに追いついてしまった。
こいつの足は本物だ
相手ディフェンスが、マサに体をぶつけてくる。
マサの後ろについて走ってきた、ヤマが「戻せ」とマサに
「抜け!」とタニ
しかし、4月に入ったばかりのマサにフェイクやバックパスなんて、そんなややこしいことなんかできない。
奴はもらったボールはどんなときもシュートのみ…「打てぇ〜」
何度もシュートをスカっていた、マサ、しかし思い切り振り抜く…
地をはうような、鋭いシュート…
キーパー、足を出してとめようとするが、届かず、ボールはゴール左に突き刺さった。
「ひょっして、こいつ…才能あるかもしれない」
ベンチが沸いた…こんなにきれいに点が取れたのは初めてだった。
初めて形ができた。
選手たちの真っ黒な顔に笑顔が戻った。にやついた顔ではなく、笑顔だった。
結局4対1で勝った。これでやっと2勝目。
真剣さを取り戻した2試合目
彼らはサッカーを楽しんでいた。よかった。こうじゃないと、おもしろくない。
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