■回想 「ドライバー事件」
実は、昔、俺が若かったころ、こんなことがあった。
俺がサラリーマン当時、開発したての新しい機械があった。エアコンの排熱を利用してお湯を沸かすという発想の機械だった。今、その流れが一般家庭まで普及しはじめ、「エコ○○」みたいな名前で出ている。
その機械でサウナのお湯を沸かしてみようということになった。それが、でかい機械でね、人が2、3人楽に入れる物置ぐらいある。それを実際に営業しているサウナに使ってもらってテストしていた。
石油のボイラーと比べてどちらが安上がりなのかとかさ、ちゃんと設定どおりの温度のお湯をつくっているかとかね…
ある真夏の日
新人だった俺は、実験データーを取ってこいと、上司に言われ、電車を乗りかえ、乗りかえ1時もかけて行ったんだよ、そこのサウナへ。測定するデータは、気温、湯温、高圧側圧力、低圧側圧力、電圧、電流…十数項目ぐらいあったかな…今日の午後2時に測定データのグラフ用紙が切れる。それを入れかえて、測定したデータを持ってくるという、サルにでもできる仕事だった。
地図を見ながら、やっとそのサウナについて、サウナの従業員の人に、あいさつをし、測定させてもらう許可を得て、機械の設置してある屋上に上がる。日差しが照りつけ、コンクリートの屋上はその照り返しでめちゃくちゃ暑かった。

ひとりになったところで、日陰に入り、たばこを一服、さて、データを取り出そうかと思って、機械のドアを開け、測定器を取り出し、中の測定データを取ろうとしたら…ない、えっドライバーがない、「うそ!!」、ドライバーがないと、そこに見えているデータのグラフが取り出せない…鞄の中を幾ら探しても、入れたはずのドライバーセットがない。
午後2時にデータのグラフ用紙が切れる。それを新しい用紙に交換しなければ、先のデータが取れない。どうしよう…「だめでした」では済まないよな〜、怒鳴られるかな、どうしよう…、新人で即左遷か?…
そのとき、周りを見回すと、工事が終わったばかりの屋上に、五寸釘が一本落ちていた。
ひらめいた!!…やりましたね、その五寸釘をコンクリートにこすりつけ、削り始めたんだ。夢中だったね、もし人がいて、その姿を見たらどう思ったろうか?…必死に五寸釘をコンクリートに押しつけて削っているスーツ姿の男を。
必死に削る、徐々に平になってきた五寸釘、灼熱の太陽は、容赦なくスーツ姿のサラリーマンに襲いかかる。測定器のネジに合わせてみる。だめだ…まだまだ合わない。スーツを脱ぎ捨て、ワイシャツ姿でさらに削る、削る、削る…。再びネジに合わせてみる。幅が合わない。削る、削る…。
削り倒すこと30分、五寸釘ドライバーの先端は、ぴったりネジ山にはまった。完成したのです。
ワイシャツは汗でべたべた。しかし、捨てられていた、ただの五寸釘が、ドライバーへと見事に変身したのだった。やっとのことデータ収集と用紙の交換は完了した。
「素晴らしい」と俺は思ったね。「初めて自分で自分をほめてやりたいと思います」なんて、誰かが言ったが、そんな感じだった。
それで会社に帰って、わざわざ持って帰ってきた自信作のドライバーをみんなに見せながら、周りの先輩諸氏にその話をしたんだ。「いやー、参りましたよ…五寸釘を…ドライバーに…」
すると、横に座っていた女の子が
「買うか、借りればよかったんじゃないの?」…
それを聞いた先輩諸氏、爆笑の声と罵声の嵐
「こいつ、アホや…」
「ドライバー、つくったんだって…おっかしい」
「君、何考えとんのや」
まあ、まあ、1年生社員が一生懸命やったんだから、いいじゃないねぇ、何もそこまで言わなくてもさ…でもね、それ以来、結構有名になってしまったんだよ。
「おう、君かね、五寸釘のハシモト君というのは」って
そこで浮かんだ言葉
「努力は決して人を裏切らない」
…ハハハ
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実は、昔、俺が若かったころ、こんなことがあった。
俺がサラリーマン当時、開発したての新しい機械があった。エアコンの排熱を利用してお湯を沸かすという発想の機械だった。今、その流れが一般家庭まで普及しはじめ、「エコ○○」みたいな名前で出ている。
その機械でサウナのお湯を沸かしてみようということになった。それが、でかい機械でね、人が2、3人楽に入れる物置ぐらいある。それを実際に営業しているサウナに使ってもらってテストしていた。
石油のボイラーと比べてどちらが安上がりなのかとかさ、ちゃんと設定どおりの温度のお湯をつくっているかとかね…
ある真夏の日
新人だった俺は、実験データーを取ってこいと、上司に言われ、電車を乗りかえ、乗りかえ1時もかけて行ったんだよ、そこのサウナへ。測定するデータは、気温、湯温、高圧側圧力、低圧側圧力、電圧、電流…十数項目ぐらいあったかな…今日の午後2時に測定データのグラフ用紙が切れる。それを入れかえて、測定したデータを持ってくるという、サルにでもできる仕事だった。
地図を見ながら、やっとそのサウナについて、サウナの従業員の人に、あいさつをし、測定させてもらう許可を得て、機械の設置してある屋上に上がる。日差しが照りつけ、コンクリートの屋上はその照り返しでめちゃくちゃ暑かった。

ひとりになったところで、日陰に入り、たばこを一服、さて、データを取り出そうかと思って、機械のドアを開け、測定器を取り出し、中の測定データを取ろうとしたら…ない、えっドライバーがない、「うそ!!」、ドライバーがないと、そこに見えているデータのグラフが取り出せない…鞄の中を幾ら探しても、入れたはずのドライバーセットがない。
午後2時にデータのグラフ用紙が切れる。それを新しい用紙に交換しなければ、先のデータが取れない。どうしよう…「だめでした」では済まないよな〜、怒鳴られるかな、どうしよう…、新人で即左遷か?…
そのとき、周りを見回すと、工事が終わったばかりの屋上に、五寸釘が一本落ちていた。
ひらめいた!!…やりましたね、その五寸釘をコンクリートにこすりつけ、削り始めたんだ。夢中だったね、もし人がいて、その姿を見たらどう思ったろうか?…必死に五寸釘をコンクリートに押しつけて削っているスーツ姿の男を。
必死に削る、徐々に平になってきた五寸釘、灼熱の太陽は、容赦なくスーツ姿のサラリーマンに襲いかかる。測定器のネジに合わせてみる。だめだ…まだまだ合わない。スーツを脱ぎ捨て、ワイシャツ姿でさらに削る、削る、削る…。再びネジに合わせてみる。幅が合わない。削る、削る…。
削り倒すこと30分、五寸釘ドライバーの先端は、ぴったりネジ山にはまった。完成したのです。
ワイシャツは汗でべたべた。しかし、捨てられていた、ただの五寸釘が、ドライバーへと見事に変身したのだった。やっとのことデータ収集と用紙の交換は完了した。
「素晴らしい」と俺は思ったね。「初めて自分で自分をほめてやりたいと思います」なんて、誰かが言ったが、そんな感じだった。
それで会社に帰って、わざわざ持って帰ってきた自信作のドライバーをみんなに見せながら、周りの先輩諸氏にその話をしたんだ。「いやー、参りましたよ…五寸釘を…ドライバーに…」
すると、横に座っていた女の子が
「買うか、借りればよかったんじゃないの?」…
それを聞いた先輩諸氏、爆笑の声と罵声の嵐
「こいつ、アホや…」
「ドライバー、つくったんだって…おっかしい」
「君、何考えとんのや」
まあ、まあ、1年生社員が一生懸命やったんだから、いいじゃないねぇ、何もそこまで言わなくてもさ…でもね、それ以来、結構有名になってしまったんだよ。
「おう、君かね、五寸釘のハシモト君というのは」って
そこで浮かんだ言葉
「努力は決して人を裏切らない」
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